【コラム】一部の相続人が海外にいる場合

2015-06-03

1 相続人が海外にいる場合の問題点

  子供の一人または数人が、海外に赴任している、もしくは海外で暮らしているというときに親が死去して相続が発生すると、相続人全員が日本国内に住んでいるときにはない問題が生じます。

(1)遺産分割協議に参加できない!

   相続人が複数いる場合は、遺産はいったん全員のもの(いわゆる共有)となり、相続人間の協議を経て分配されます。このような協議を「遺産分割協議」といい、相続人全員で協議しなければなりません。相続人のうち1人でも遺産分割協議に参加していなければ、その協議は全部が無効になってしまいます。しかし、一部の相続人が海外にいる場合、簡単には全員が集まれませんし、集まるために費用も時間もかかってしまいます。それでも、実際に相続人全員が顔を合わせて話し合いをしなければならないのでしょうか。

(2)遺産分割の調停や審判に参加できない!

   なんとか皆が集まったとしても、遺産分割協議がうまくまとまらなければ、調停や審判をすることが考えられます。この場合、海外在住の相続人が調停や審判で自分の希望や意見を主張するにはどうすればいいでしょうか。

(3)そもそも相続人なの?

   例えば、海外に暮らしていて、長らく音信不通で生死も不明という場合や、海外で結婚をして外国籍となっているような場合、そもそもその人は相続人となる資格があるかどうかという疑問も生じます。

 

2 相続人が海外にいる場合の対応策

(1)遺産分割協議に参加できない!

   遺産分割協議では、最終的な協議内容を反映した遺産分割協議書を作成します。相続人全員の署名押印があれば、その遺産分割協議書は有効とされています。そこで、海外に住んでいて協議の場に来られない相続人は電話やSkype等で協議に参加し、作成した遺産分割協議書を海外に郵送し、その相続人が署名押印(実印)した協議書を返送してもらいます。こうすれば、現実に全員が集まって協議をしなくとも、有効な遺産分割協議書を作ることができます。

   もちろん、電話やSkypeであっても、海外で暮らす相続人も協議に必ず参加してもらう必要があります。

   遺産分割協議書には、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります(押印が実印であることを証明するため)。日本に住所がない相続人は、印鑑証明書を取得することができないため、在外公館で印鑑証明書の代わりになるサイン証明(本人署名を証明してもらう)を取得する必要があります。なお、日本に住所を残したまま海外に暮らしている場合(海外赴任等)には、在外公館で印鑑証明書を取得することはできます。

(2)遺産分割の調停や審判に参加できない!

   遺産分割協議が難航して調停や審判に発展してまった場合、海外に暮らす相続人は代理人を通じて自分の希望や意見を述べることができます。代理人には、弁護士がなるのが一般的です。

   海外に暮らす相続人が代理人を選任せず、帰国して審理に参加するつもりもないような場合には、不在者財産管理制度の利用(HP原稿21、リンク貼付け)が考えられます。

   

(3)そもそも相続人なの?

   海外で暮らす相続人につき、音信不通で生死も不明状態が7年以上継続していれば失踪宣告、7年未満であれば不在者財産管理制度を用いることになります。これらの制度については、「遺産分割協議の注意点HP原稿21、リンク貼付け)」にて詳しく解説がありますのでご参照下さい。

   また、相続人が外国籍となっていたとしても、被相続人が日本人であれば、日本法が適用されます。日本法上、国籍は被相続人になるための条件ではありません。したがって、例えば被相続人の子が外国籍であったとしても、被相続人の子である以上、(廃除又は欠格事由がなければ)他の日本国籍の相続人と同様に相続人となります。ただし、サイン証明の取得手続きなど、諸手続きには時間がかかることが予想されるので、余裕を持って、早い段階から知識のある弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

   

 

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