【コラム】寄与分とは

2015-04-06

大介護時代

現代日本は大介護時代だと言われています。我が国が世界に誇る平均寿命の長さを支える裏側には、ご家族等による長期的かつ献身的な介護があります。特に、認知症が発症してしまった高齢者などの在宅介護の負担は、そのご家族等にとって肉体的にも精神的にも非常に過酷なものとなることが少なくありません。そして、多くの場合、そのようなご家族等は無償で介護を行っているのが通常です。

 

介護と相続

このように要介護状態となっていた被相続人が亡くなった場合、被相続人の財産について相続が発生します。ここでよく問題となるのが、相続分をめぐって相続人間で生じている不公平をどのように調整すべきかという問題です。例えば、長期にわたって被相続人の身の回りの世話をするなどしてその生前に過酷な介護の負担を強いられてきた相続人と、そうでない、例えば、遠方に居住していて被相続人の面倒は一切見ていなかったような相続人とがいた場合に、各相続人は単純に法定相続分に従った割合でしか相続財産を相続できないのでしょうか。もちろん被相続人が自己の身の回りの世話をしてくれている相続人に有利な遺言を残してくれていれば問題ありませんが、このような遺言がないケースでは、しばしば遺産分割を巡って相続人間でトラブルが発生します。

 

寄与分という制度

このような場合に頭の片隅においていただきたいのが「寄与分制度」です。寄与分とは、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者に、当該寄与の度合いに応じて優先的に相続財産を分配するという制度です。

上記介護のケースであれば、当該介護活動(療養看護)によって、相続財産が増加した、もしくは減少を免れたといえるのならば、これを寄与分として、一定割合の相続分を優先的に取得できることになります。

(1)制度の目的

寄与分という制度は昭和55年の民法改正で追加されました。それまでも事実上寄与分を認めていた判例はあり、一定程度定着していたものを法制化したものといえます。

制度の目的は、相続人間の「実質的衡平」を図るというものです。すなわち、相続人相互間で、ある相続人Aが被相続人の財産の維持または増加に貢献し、他の相続人Bが何も貢献しなかった場合に、BがAの貢献に基づく相続財産の維持増加分についてもAと等しい割合を相続分として取得するというのではさすがにバランスを失しますので、相続人間の公平を図るという観点から各相続人が取得する相続分を調整しようという考え方です。

(2)どのような場合に寄与分が認められるか

では、実際にどのような場合に寄与分が認められるのでしょうか。

法律上、その要件は相続人の「特別の寄与」行為によって、「相続財産の維持または増加」がもたらされたかどうかで判断されます。つまり、単に寄与行為があればよいというわけではく、かかる寄与行為によって実際に被相続人の財産が増加し、又は減少を免れた事実(相関性)がなければ寄与分が認められませんのでご注意ください。

そして「特別の寄与」とは、被相続人と相続人の関係(身分関係、扶養関係その他同居の有無などの生活実態)をベースに、通常期待される程度を超えて、財産の維持または増加に貢献したことをいいます。実務上は、

 ①無償性(報酬の有無、その額の多寡)

 ②継続性(労務提供の時期・期間)

 ③専従性(労務の内容)

 ④特別の貢献であるか(被相続人との身分、扶養関係・労務提供に至った事情)

などの事情を総合的に考慮して判断されます。

(3)実際に寄与分が認められた事例

介護に関連する判例を概観すると、例えば、認知症が進行した被相続人に対し、対価を求めず(①)、死亡するまでの約10年間(②)、付き添って療養看護を行った(③、④)相続人に対して寄与分を認めた審判例(盛岡家審昭和61年4月11日)や、2年6ヶ月に渡り(②)、高齢のため衰弱し入退院を繰り返すようになった被相続人を引き取って(④)、日常の世話・入退院の付き添いなど療養看護につとめた(③)相続人に300万円の寄与を認めた事例(広島高決平成6年3月8日)などがあります

 

次回は、寄与分をどのように請求すればよいかを説明します。

 

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