【コラム】未受給年金の相続

2015-07-23

1 年金に対する不安

  年金制度には現在、強い疑念が寄せられています。最近では、125万件の個人情報が流出したという報道がなされましたし、2007年ころには「消えた年金」問題もありました。さらに、少子高齢化によって年金の財源確保が確保できるのかといった根本的な問題など、多くの問題点が指摘されており、将来的な見通しに不安をお持ちの方も多いかと思います。

2 支払われるはずの年金が払われていない場合

  今回の情報流出は、社会保険庁のコンピュータがウィルスに感染して発生しました。今回は情報の流出でしたが、例えば、コンピュータがクラッキングされて年金情報を改ざんされることもありえます。仮に年金受給者がこの改ざんされた年金額を受給し、亡くなったあとで改ざんが発覚し、本来は年金をもっと受給もらえていたことが判明したような場合、この未払の年金は誰に支払われるのでしょうか。

  同様の問題は、2007年の「消えた年金」問題の時にも既に発生しておりました。受給者が亡くなった後に、年金記録の訂正によって未払分の存在が判明した場合、どのように扱われるのかが問題になります。

  なお、これから説明する話は、基本的には国民年金についてのお話ですので、あらかじめご了承下さい。

3 未受給年金は相続の対象になる?

  年金も、お金を支払ってもらう権利ですから、債権であると考えれば、年金を受給できる権利自体が相続の対象になりそうです。しかし、実は未受給年金は相続の対象にはなりません。最高裁判所の判決にもなっており、相続性は否定されています。

  現実に発生しているにもかかわらず未支給となっている国民年金については、国民年金法という法律に規定があります。これによれば、「配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と定められており(19条)、配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹という順で、未支給年金の支給を請求できることになっています。

  これは、民法上の相続のルールと似ているように見えてかなり異なります。民法上の、相続では、例えば被相続人の相続財産が100万あって、配偶者と子1人が相続人だとすると、配偶者と子は50万ずつ相続することになりますが、100万円の未受給年金がある場合で、配偶者と子がいる場合には、配偶者が全額を請求できることになります。このようにルールが異なる理由としては、年金受給者の収入に頼っていた遺族の生活保障のためであると説明されています。

  このような特別ルールをあえて国民年金法は定めているため、未受給年金については、通常の相続によるのではなく、この特別ルールによるのだということになっているようです。

4 年金も相続も複雑

  このように、国民年金の未受給年金についての制度の特殊性を見てみても、年金という制度がいかに複雑なものであることがお分かりいただけたかと思います。年金には国民年金の他にも厚生年金や共済年金があり、それぞれに法律でルールが決まっています。

  一度相続が起これば、他の様々な問題とともに、年金まつわる問題も同時に発生する可能性があります。こういった年金と相続について疑問がある場合は、弁護士などの専門家に相談してみるのが良いと思います。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2014 早稲田リーガルコモンズ法律事務所(遺言相続) All Rights Reserved.