【コラム】経営者の相続・事業承継

2015-10-29

同族経営の会社では、次の世代へのスムーズな事業承継に向けて、計画的に準備をしておいた方がよい事項があります。

 

1.株式について

相続に当たって株式を承継させる相手方やその割合の決定は重要です。もし、自分が保有している株式を承継させる相手方や割合を既に決めているのであれば、遺言書を作成してその旨を予め定めておくことが望ましいでしょう。もっとも、承継株式の評価額如何によっては注意が必要です。例えば、遺言によって自分の長子に保有株式の全部を承継させたところ、他の相続人の遺留分(遺言・相続業務メニュー「遺留分と遺留分減殺請求」参照)を侵害する結果になるようなケースです。この場合、せっかく、経営権の円滑な承継を企図して遺言書を作成したのに、遺留分をめぐって相続人間に紛争が発生してしまう可能性もあるわけです。

この点に関連して近時注目されているのが「経営承継円滑化法」です。この制度は、株式を後継者(推定相続人に限ります。)に承継させるに当たって、推定相続人全員の合意により、当該株式を遺留分算定の基礎財産から除外し(除外合意)、又は、遺留分算定額を予め固定する(固定合意)というものです。なお、当該合意について、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を得る必要があります。

ところで、社歴の長い会社では、数世代の相続を経るうちに株式の保有者が拡散してしまうことがあります。株主が拡散すれば、経営に対して様々な介入を受けるリスクが発生します。相続による株式の拡散を防止する見地から、会社法は、会社が相続人等に対して承継した株式を売り渡すよう請求できる制度を設けています。このような相続を見据えた会社の定款設計も重要なポイントです。

 

2.取引先について

中小企業では、経営者の人的信頼関係に基づいて商取引が継続している場合があります。長年の取引先であるからといって安心していても、世代交代を機に取引が終了してしまうことも多々あります。こうした問題は、いきなり後継者にバトンタッチするのではなく、一定期間、新旧共同して経営に関与することにより対処するしかありませんが、法的にも留意すべき点があります。いわゆる「チェンジ・オブ・コントロール条項」です。これは、契約の一方当事者の経営陣や支配株主に変更があった場合に、反対当事者が当該契約を解除したり、変更したりすることができるという条項です。現在、効力のある契約書中にこのような条項がないかを確認し、必要に応じて、相続・遺贈による株式の承継を条項から除外するなどの措置を検討することも重要です。

 

3.金融機関について

金融機関との関係においては、融資契約における保証の問題があります。経営者個人が会社の連帯保証人になっているケースは非常に多くあります。近時公表された「経営者保証に関するガイドライン」では、金融機関に対し、事業承継に伴う後継者との保証契約の締結や前経営者との保証契約の解除について、その必要性等の検討を求めています。事業承継をきっかけに、会社の財務基盤やガバナンスを見直すことで、金融機関と保証契約について協議することも可能になるといえるでしょう。

 

このように、事業を承継する場合には様々な課題がありますが、会社の事業構造を見直す絶好の機会であるともいえます。専門家を交えてぜひ事業承継の戦略を練ってください。

 

 

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