【コラム】認知症に備えて

2015-08-04

平成27年1月、厚生労働省は「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を公表しました。厚生労働省の発表資料によれば、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で 自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」のが、新オレンジプランの基本的考え方とのことです。高齢化社会を迎え、認知症に罹患する人が増加することが予測される中で、認知症になった時の準備をしておくことは不可欠だといえます。

 

1.認知症と法律行為

 認知症が進み、物事の判断能力を常に欠く状態になると、相手との会話などのやり取りができないという現実的な問題が起こります。また、判断能力を欠く以上、契約が無効とされてしまう可能性があるため、様々な契約を自分で結ぶことができなくなります。例えば、身体を壊してしまい入院したくても自分で入院や治療をするための契約を結ぶことができません。また、自分の所有する不動産を売ったり貸したりする契約もできませんし、住居が借家の場合、賃貸借契約の更新すらも自分ではできなくなってしまいます。

 

2.成年後見制度

 このように物事の判断能力を常に欠く状態に至った場合には、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい(法定後見人といわれることもあります)、成年後見人が本人に代わって様々な契約を結ぶ必要があります。成年後見人は、親族が選任されることもありますが、弁護士などの専門職が選任されることもあります。特に、不動産や有価証券などを複数保有している場合等には、事務処理量の負担などを考えると親族よりも弁護士等が後見人となる方が適しているとも考えられます。また、いずれ本人が亡くなった場合には相続が発生し遺産分割をすることになりますが、親族が後見人になると、相続人間の負担の軽重で揉めたり、後見人であることを良いことに本人の財産を使い込んだのではないか等あらぬ疑いを掛けられて、遺産分割が紛糾する可能性もあります。相続人が複数いて、このような紛争が予想される場合にも専門職の後見人が望ましいでしょう。成年後見人に誰が選任されるかは、最終的には裁判所の判断になりますが、このような事情がある場合には、申立時に事情を説明すると良いでしょう。

 

3.任意後見制度

 他方で、物事の判断能力を常に欠く状態に至る前、まだ判断能力があるうちに将来の備えとして、弁護士などの専門職と任意後見契約を結んでおくという方法もあります。これは、将来、判断能力を常に欠く状態になった場合には、任意後見人が本人に代わって、任意後見契約に定めた内容を実施します。このとき、家庭裁判所が「任意後見監督人」という監督者を新たに選任し、任意後見人が不正をしないか等を監督します。

 法定後見人は、本人の意思とは無関係に選任されますが、任意後見人は本人が選んで契約することができます。後見人として自分の将来を委ねる相手を自分で選ぶことができるといえますし、事情をよく知っている者を後見人にすることができるので安心です。

 認知症に備えて、弁護士にもお手伝いできる分野があります。一度、お気軽にご相談下さい。

 

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