【コラム】遺言について~現行法と法改正の動き~

2016-11-30

1 「遺言」の法律の要件

 遺産をめぐる争いが発生したときの確認事項として、遺言の有無があります。

一般に「遺言が存在する場合にはその遺言に沿って処理される」と考えられがちです。 しかしながら、遺言があればそれに沿って処理がされるというわけではありません。

というのも、「遺言」の効力は民法に定める条件を充たすことで初めてその効力を有するからです。仮に、遺言がその条件を充たさない場合には、原則としてその遺言は効力が発生せず(民法960条)、遺言作成者の意思に沿った処理の実現ができなくなってしまいます。

そこで、今回は、遺言のなかで、最も作成されることが多い「自筆証書遺言」の作成についてみていきます。 最後に、法改正の動きもありますので、その動向も確認していきましょう。

 

2 ご自身で作成する遺言(自筆証書遺言)

(1)作成者が遺言を作成する場合には、遺言者が①全文、日付、氏名を自書して、②印を押さなければならないとされています(民法968条1項)。

(2)パソコンによる作成はどうでしょうか。 せっかくだから体裁を整えた遺言を作成したいと思いパソコンで作成されるケースがあります。しかしながら、ワープロやパソコンで作成した場合には「自書」とは認められません。これは、自書、すなわち自分の手で書いて作成することで偽造を防ぎ、遺言者の意思を反省した遺言を作ることを重視しているためです。ですので、民法が定める条件を欠き、効力が発生しません。  

また別のケースとしては、遺言をパソコンで作成しデータを残していたけれども、印刷をしないまま亡くなり、その後にデータは発見された、というものがあります。この場合も、たとえ本人が当該ファイルを作成していたとしても、「自書」されていないため、法律上の条件を欠いているため、法律上の効力が発生しません。

(3)家族が手を添えて作成したものはどうでしょう? まず確認しておくべきことは、作成者が口頭で伝えて、他の者が聞き取って作成したものは「自書」とは認められません。

では、その上で、作成者以外の者が手を添えながら書いたものはどうでしょうか。最高裁判所は、①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、②遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、③添え手をした他人の意思が介入した形跡のない場合には、自筆であるとしています(昭和62年10月8日)。

このように、裁判所は、遺言の作成にあたり、遺言者の意思がそのまま反映され、第三者の意思が入らないよう厳しく条件を定めています。

(4)作成日付がないものはどうでしょうか。ここでいう作成日付とは、年月日の全てを要します。

例えば「平成11年11月吉日」というように日付が特定できないため、条件をみたさずに無効となってしまいます。

 

3 法改正の動き

 ここまで見てきたように、ご自身で作成される自筆証書遺言の「自書」については厳しい条件が定められています。 なお、現在、法務省で自筆証書遺言の方式緩和が検討されています(平成28年6月21日現在)。具体的には、対象財産の特定(不動産の所在、地番、家屋番号など)については、自書でないなくてもよいものとするが、その事項が記載された全てのページに署名押印する(http://www.moj.go.jp/content/001201997.pdf)。

この改正案は、財産特定のための記載事項についてのもののみであり、それ以外については検討されていません。 したがって、自書で遺言を作成する場合には、作成者が全てを手書きし、日付、署名、押印をして初めてその効力が発生します。作成前に、今一度、その条件をご確認ください。 

 

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