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【コラム】相続により負う債務への対応

2016-12-26

 1 「借金」も相続されます。

よくテレビドラマでは「お父様が亡くなったのは悲しいけれども、その遺産は5億円。母も既に亡くなっているし、私は1人っ子だからこの財産は全て私のもの。」などの光景が流れます。では遺産がなくて、逆に3億円の「借金」があるとすると、どうなるのでしょうか。相続により「借金」はなくなるのでしょうか。

じつは、「借金」(金銭債務)は、相続放棄や限定承認などをしない限り、相続することになります。つまり、なんの手当てもしないと、相続人は「借金」を相続することになってしまいます。

 

2 原則:各相続人の債務額は相続分に従って負います

相続人は、相続分(法定相続分又は遺言などで指定された相続分)に応じて「借金」(金銭債務)を負うことになります。言い換えると、お金を貸している人は、相続人に対して、当然に「貸したお金を支払え」と請求することができることになります。

なお、保証債務など契約の内容によって、相続人には債務を負わせないとする契約ものもありますので、すぐに応じるのではなく、まずはよく契約書を確認することが重要です。

 

3 ~事例を通して~

【事案1】Aさんには、妻と子(40歳)がいます。Aさんは友人Bから1000万円の借金をしていたとします。Aさんが亡くなった場合、相続人は妻と子の2人です。遺言もないことから、相続分は民法に従い、それぞれ2分の1ずつとなります(民法900条1号)。

【結論】この場合、お金を貸している友人Bは、相続人である妻と子に対して、それぞれ500万円ずつ支払うように請求することができます。

 

では次の場合はどうでしょうか。

【事案2】事案1と同様に、Aさんには、妻と子(40歳)がいます。Aさんは友人Bから1000万円の借金をしていたとします。Aさんは生前、「妻の相続分は4分の3、子の相続分は4分の1とする」という遺言を残していました。債権者Bは、その遺言の存在を知るはずもなく、子に対して、例1と同様に500万円を請求しています。子はこれに応じて払わなければならないのでしょうか。

【結論】現在の最高裁が定めたルールとしては、債権者Bが、法定相続分に従った請求した場合、「借金」を相続した相続人はその請求に応じなければなりません(最判平成21年3月24日)。差額である250万円については、相続人がいったん支払って、あとから他の相続人に自ら取り立てることになります。つまり、請求された人は、回収のリスクを一時的に負わされていることになります。

では仮に、債権者Bが遺言の存在を知っていた場合はどうでしょうか。この場合は、最高裁のルールでは、債権者Bが子の相続分が4分の1であることを承認した場合には、債権者Bは子に250万円をだけ請求することはできます。

 ですので、債権者からは法定相続分を基準として請求がされることになります。 

 

4 相続による債務を負うことの対応方法

相続をきっかけに、突然に「借金」を負う場合の対応方法としては、①相続放棄する、②限定承認をする、という2つの手段が考えられます。

相続放棄とは、はじめから相続人ではなかったことにする制度です(民法939条)。したがって、「借金」を負うこともなく、請求されても一切払う必要はありません。しかし、相続放棄は、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりませんのでご注意ください。

 また、限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナス財産も負担するものです。これには相続人に全員の同意が必要となり、1人でも反対すれば使えません。

 

 以上のとおり、相続によってある日突然、債務超過に陥ることもあり得えます。相続が発生した場合には、財産の調査を含めすぐにご相談ください。

【コラム】寄与分

2016-12-15

 

相続が発生すると、①相続人の調査、②相続財産の調査、③相続分の確定、という3つの大きなステップを踏むことになります。③相続分の確定の場面では、相続人間で調整が必要な場合があります。具体的には、被相続人から特別の利益を受けていた相続人がいる場合(特別受益の問題)」と相続財産の維持又は増加に特別の寄与がある相続人がいる場合(寄与分の問題」などの場合、公平の観点から受益や寄与を適切に評価し、財産の相続時に調整をする必要があります。本コラムでは、「寄与分」について整理していきたいと思います。

 

1 「寄与分」の計算方法

 寄与分が想定されている場面は、①相続人が被相続人の事業に協力し親の財産形成に貢献してきたような場面、②相続人が被相続人の介護や看護をすることでケアサービスなどの費用を抑え財産維持に貢献してきたような場面、が法律では典型的に想定されています(民法904条の2第1項)。

 寄与分の計算方法は、寄与者の相続額は、(相続開始時の財産価格-寄与分の価格)をみなし財産とし、みなし財産×相続分+寄与分の価格となります。

2 「寄与分」の要件

 まず、寄与分は、単に相続人が被相続人のお世話をしていたからといって認められるわけではありません。寄与分が認められるためには、①事業や看護などの寄与行為が存在すること、②寄与行為が被相続人との身分関係において通常期待される協力、援助を超えた程度であること、すなわち「特別の寄与」といえること、③相続人の寄与行為が相続人の財産の維持または増加させたこと、が必要とされています(民法904条の2第1項)。

まず、要件①にあたる寄与行為の類型としては、大きくわけて5つあります。これに従って、被相続人への貢献・協力を整理することが有用です。

(ⅰ)被相続人のために家事労働をしてきた類型

(ⅱ)被相続の事業のために出資や借金返済をした類型

(ⅲ)生活費を渡してきた類型、

(ⅳ)看病や介護をしてきた類型

(ⅴ)財産を管理してきた類型

次に、要件②の「特別の寄与」は、通常期待される程度の協力・援助を超えている必要があります。ここに通常期待される程度の協力・援助とは、民法が定める夫婦間の協力扶助義務、親族間の扶養義務のことをいいます。親族として当然の協力・援助を超えて、通常期待される程度を超える程度と評価されるかは、それまでの人的関係や頻度、対価性がない、期間などを総合的にみて判断されます。

例えば、単に、被相続人を介護していた事実、被相続人の病院への送迎をしていた事実などはこれにあたりません。療養看護の例でいえば、重い老人性痴ほう症の被相続人を10年にわたり看護してきた事例などが「特別の寄与」にあたると判断されました(盛岡家庭裁判所昭和61年4月11日家月38巻12号17頁)。

 

3 寄与分の財産評価

 寄与分の主張は、相続分の決定の場面、つまり相続財産を分けた時に各相続人がどれぐらいの相続財産を取得できるか、という場面で機能します。そのため、事業への資金提供や財産給付など寄与行為について金銭的評価が容易である場合には、それに基づいて判断されることになります。他方で療養・看護などの家事労働や家業への労務提供は、金銭的な評価が容易ない場合には、全財産に対する割合で定める方法や具体的な金額をもって算定する方法をもって判断されることになります。

 

4 裁判所での調査官による寄与分調査

 このように、寄与分の主張は、相続人と被相続人との間の関係を個々に見ていくことになります。そのため、他の相続人が知らぬところの事実が出てきたりして、言い分がぶつかり、協議がまとまらない場合が起こりえます。

 遺産分割協議の調停を申し立てた場合、裁判所は、事実の調査や評価について家庭裁判所調査官による調査を行うことがあります。裁判官が調査官による調査を命じた場合には、調査官が既に提出されている書面や資料をもとに調査をし、分析・評価し、報告書を作成します。

 遺産分割調停が成立しない場合、裁判所が審判という最終的な判断を示しますが、上記調査報告書は、1つの判断資料として重要な役割を担います。

 

5 まとめ

 このように、寄与分は、人的関係や期間、対価性がないことなどを総合的に判断していることが求められます。適切にご自身の主張をするためにも、弁護士にご相談ください。

 

【コラム】遺言によるトラブル防止のために。付言事項という予防線

2016-11-22

1.遺言の限界

遺言とは、自ら築いた財産を、死後、その意思に従って遺された人に分配するための制度です。ところが、遺言の内容は、必ずしもそのまま実現されるとは限りません。以下の事例を見ながら、遺言からどのようなトラブルが生じるか、検討してみましょう。

 

⑴登場人物

今回遺言を作成するのは、80代の男性A。Aには妻がいましたが、既に先立たれていますので、法定相続人は、50代の子である長男Bと、次男Cの2人のみです。

 

⑵遺言者Aの考え

Aは、自分がこれまでに働いて築いた財産を、自分の子であるBかCのうち、より自分の家計を助けてくれ、また、自分の生活を支えてくれた者に譲ろうと考えました。

経済面では、Bは高校卒業後すぐに家を出て独立して働きに出たため、Aに学費や生活費の負担もさほどかけていませんでした。一方、Cは、Aに大学の学費負担をさせた上、社会人になってからも何かとAに金銭的な援助をしてもらっていました。

また、生活面では、Bは、Aが妻に先立たれ、段々と体調も悪くなっていった時、わざわざAの近くに引っ越して一人で暮らすAの家事を手伝ってくれました。一方、Cは遠くに住んだまま、Aにあまり連絡もよこしませんでした。

このような事実を踏まえて、Aは、自分が亡くなった後、これまで金銭的な負担もかけず、家事を手伝うなどしてくれたBに残った財産を全て譲ろうと考え、その旨の公正証書遺言を作成し、自分が亡くなった後に備えたのです。その後程なくして、Aは死亡しました。

 

⑶法定相続人Cの考え

ここで、Cに視点を移してみましょう。Cは、Aが亡くなった後、遺言が残されていることを知り、その内容を見ました。そこには、「相続財産は全てBに相続させる」という言葉があるのみでした。何故自分は相続を受けられないのか、その理由について知ることができません。Aの遺言に納得できなかったCは、「BがAの自宅の近くに住み、家事を手伝うために週に数度、Aの家に出入りしていた。ひょっとしたら、Bは日頃からAに何か吹き込んでいたのかもしれない。」などと考え、Bに対して遺言の内容について不服を述べますが、Bはこれに取り合いませんでした。

ところで、民法は遺留分減殺請求という制度を設け、相続を受けられなかった法定相続人(ただし亡くなった人の兄弟、姉妹を除く)は、その法定相続分(この事例でいうと、BとCが2分の1ずつ)の半分までは、その取り戻しを請求することができます。

Cは、上述のとおり、遺言の内容に不服があったことから、この遺留分減殺請求をすることとしました(今回でいえば、相続財産全体のうち4分の1までの財産をBから取り戻すことができます)。

その後、結局、CとBの争いは、調停を経てもまとまらず、最終的に遺留分減殺請求訴訟にまで発展することとなりました。

 

2.遺言の内容から生じた訴訟

このように、Cが遺留分減殺請求をした場合、遺言を通じて残されたAの遺志は、残念ながら100パーセントは尊重されないことになります。さて、このように兄弟間での争いが訴訟にまで至ってしまったことの原因は、どこにあるのでしょうか。

ひょっとすると、その原因は遺言の内容そのものではなく、CがAから「きちんと説明を受けることが出来なかった」ことにあるのかもしれません。共に過ごした時間が長い分、家族の問題は多分に感情が入り込みます。感情の部分で納得できれば、訴訟という形で争いが顕在化することもなかったかもしれません。

 

3.付言事項って?

上記のような訴訟トラブルを避けるための方法として、遺言に「付言事項」を記載することが考えられます。今回は、この「付言事項」とは何かご説明しましょう。

まず、遺言の内容には、大きく分けて「法定遺言事項」と、「付言事項」があります。

前者の「法定遺言事項」は、遺言に記載することによって法的な効力を生じる事項を言います。例えば、相続財産の何を誰に譲るかといった内容(相続分の指定)などが挙げられます。一方、後者の「付言事項」は、「法定遺言事項」以外の事項、すなわち法的な効果を持たない内容を指します。

この「付言事項」は、法的な効力を持たない分、自由にその内容を記載することができます。最もよくされるのは、何故そのような内容の遺言となっているかの理由を記載した、遺言者の相続人へのメッセージです。遺言者が何を考え、残された家族にどう過ごして欲しいのかを記載することによって、家族への想いを残すことができるのです。

今回の事例では、Cはひょっとしたら、他ならぬAから、何故CではなくB

に財産を相続させるのかの説明を受け取れば、自分がAの財産を相続できない理由に納得し、Bに不服を述べることはなかったかもしれません。また、自分の親であるAから「BとCは、兄弟として仲良く過ごして欲しい」といったメッセージを受け取れば、兄であるBに対し、訴訟など提起することもなかったかもしれません。その意味で、法的にはともかく、付言事項には事実上の価値があると言えるでしょう。

遺言の内容のうち、付言事項は法的な意味を持つものではありません。しかし、多数の相続トラブルを目の当たりにしてきた弊所の弁護士は、このような事実上の効果も踏まえ、適切な内容の遺言を作成できるようアドバイスすることができます。さらに、弊所では映像で遺言者のメッセージを残す映像遺言サービスも行っています。大切な家族だからこそ、気持ちの部分もしっかり残したい。そのような方のご依頼を、弁護士一同お待ちしております。

 

【コラム】認知と相続の関係

2016-09-05

1.資産家の相続財産を狙って?

最近、アメリカの有名ミュージシャンであるプリンスが急逝しました。一部報道によれば、プリンスの遺した遺産は、日本円にして数百億円に上ると言われています。

このような資産家が亡くなると、「自分はあの人の子供である」と突如主張する人が現れることがあります。実際に最近のニュースでは、「自分はプリンスの子供である」と裁判所に訴えを起こした人物が、DNA鑑定の結果、親子関係を否定されたと報道されています。この人物が何を考えて、プリンスの死去後に訴えを起こしたのかは判然としませんが、動機として推測できるのは、「プリンスの「子」として認められれば、プリンスの相続人になれる(相続財産を受け取ることができる)」ということでしょう。

 

2.「子になる」ための「認知」という方法

ある男性に法律上の婚姻関係(婚姻届を出して、結婚している夫婦関係)のある妻がいる場合、妻から生まれた子供は、法律的にも男性の「子」であると推定されます。ところが、もし法律上の婚姻関係にない女性(いわゆる「愛人」や「妾」、「内縁の妻」など)との間に子供ができた場合、その子供は、当然にその男性の「子」となるわけではありません。そのような子供を法的に自分の「子」としたい場合には、「認知」という手続きを行う必要があります。TVドラマなどで「あの人には愛人がいて、認知している子供もいるらしい。」といったセリフが語られた場合、それは法的に「妻以外の女性との間に親子関係のある(相続財産を受け取れる)「子」がいる」ということを意味します。

ところで、結婚している妻との間に生まれた「子」のことは「嫡出子」といい、そうでない女性との間に生まれた「子」を「非嫡出子」と呼びますが、かつては相続できる財産に差がありました。非嫡出子は、嫡出子の半分の財産しか相続できなかったのです。ところが、平成25年9月4日の最高裁判決で、非嫡出子の法定相続分が嫡出子の半分であることは、違憲である旨の判示がなされました。これを受け、平成25年12月5日、民法が改正され、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じとなっています(ただし、適用は平成25年9月5日以降に開始した相続)。

つまり、父親の認知を受けると、嫡出子と同じ相続の権利を得ることになるのです。

 

3.相続のための認知

非嫡出子は、認知を受けることにより、法定相続人の一人となり、父親の財産を相続することができるようになります。しかも今では、その相続分も嫡出子と異なることはありません。もし、非嫡出子である方がまだ認知を受けていないのであれば、財産を平等に得られるという意味で、認知を受けるという選択肢をお勧めします。

認知の方法は、父親から届出を行うことが一般的です。すでに父親が死んでしまっていたり、認知に反対している場合には子供の方から認知の訴えを提起することもできます。

その他にも、実は愛人がいて、その愛人との間に子供がおり、自分の財産を相続させてやりたいが、その方法が分からない、あるいは生きているうちにはそれを明らかにはできない方もいらっしゃるかもしれません。このような場合、遺言によって認知を行うこともできます。これにより、生前のトラブルを避けながら、自分の子供の権利を守ることもできるのです。

弁護士は守秘義務を負っていますので、依頼者の秘密を漏えいすることはありません。

お悩みの方がいらしたら、お気軽にご相談に来られてはいかがでしょうか。

【コラム】赤ペンで斜線を引いた遺言書の行方

2016-08-22

1.事件の概要

「この間、私の父が亡くなったのですが、金庫の中から亡くなった本人が書いたと思われる自筆証書遺言が見つかりました。そこには、大半の財産を他の兄弟に譲るという内容が。自筆証書遺言としては、形式的には有効なものと思われるのですが、一点だけ、腑に落ちない部分があるのです。

その自筆遺言証書には、文面全体に大きく、赤いボールペンで斜線が引いてあるのです。」

民法には、被相続人が自筆証書により遺言をすること(手書きで遺言書を作ること)を認めています。一方で、民法は、「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。」と規定しています。「遺言書を破棄」というのは、典型的には、遺言書を破り捨てるような場合をいいます。

今回の事件で問題になったのは、破り捨てたのではなく、「赤いボールペンで文面全体に斜線を引いた」というものです。果たしてこれは「破棄」にあたるのでしょうか?

これは、最近最高裁まで争われた事件の概要です。

 

2.裁判所の判断

高裁では、遺言書に赤い斜線を引いただけでは、もともと書いてある文書の内容が判読できる以上、「破棄」とはいえない、として、遺言の内容を有効としました。

ところが最高裁は、これとは逆の判断をしたのです。曰く、「本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失われる意思の表れとみるのが相当である」と。

この判断に対しては色々な意見があるかもしれません。「最高裁のいうことはもっともだ」というものや「「破棄」っていう言葉と離れすぎていないか?」など。

 

3.自筆証書遺言のリスク

最高裁まで争われたというこの事件の評価は人それぞれでしょう。しかし、本当はもっと手前の部分に問題があるかもしれません。

民法は、確かに、自筆証書遺言を遺言の方式の一つとして認めています。しかし、民法は同時に、その有効性を厳しく制限しています。民法968条1項は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」としています。例えば署名だけ自筆で、残りはパソコンで作った書面を作っても、法的に有効とはみなされません。厳格に法律の要件を満たした書面を作らなければ、被相続人の遺志は実現されないのです。今回の事件も、自筆証書であるがゆえに、最高裁まで訴訟を続けなければならなかった、と言えるでしょう。

しかも、自筆証書遺言は、保管を厳重にしなければなりません。誰かに捨てられたり、誰にも発見されないままでいると、被相続人の遺志は誰にも伝わらないまま、闇の中へと消えてしまいます。

 

4.リスクの回避方法

以上のようなリスクを回避するには、やはり相続の専門家である弁護士に相談するのが一番でしょう。自筆証書遺言を作成したり、その内容を変更したりしたい場合に、適切なアドバイスをすることができます。

また、公証役場で作成する公正証書遺言を作成するのもリスクを回避するのに有効です。公正証書遺言は、作成と同時に、公証役場に原本が保管されます。再発行が出来るので紛失という危険は避けることができますし、遺言者が亡くなった後は、法定相続人などは公証人役場にいけば遺言検索システムで公正証書遺言の有無を確認できるので、誰にも発見されないままになるリスクは低いといえます(なお、遺言者が亡くなる前は遺言者本人しか遺言検索システムで公正証書遺言の有無を確認できないため、遺言者が言わない限り作成したことを知られることはありません)。また、自筆証書遺言の場合のトラブルにありがちな、「被相続人に無理矢理書かせた」と言った文句を言われるリスクも低いと言えます。さらに、撤回をしたいときには、その旨を記載した撤回の公正証書遺言を作成することで、赤色ボールペンで文面に斜線を引くよりも確実にその内容を撤回、訂正することができます。

遺言の内容についても、専門家として、無事に相続人に財産が行き渡るよう遺言執行者を務めたり、付言事項によって相続人にメッセージを残すことも可能です。

遺言についてお悩みの方は、是非一度弊所にご相談ください。

【コラム】遺産分割の解除

2015-12-17

1、遺産分割協議の解除に関するご相談

「父の遺産分割協議について相談させて下さい。父は今年の3月に亡くなり、母も早くに他界していましたので、私と兄の二人だけが相続人になりました。父の財産は、自宅建物とその敷地、預金、株式などで3億円ほどありましたが、そのうち都心の一等地にある自宅建物とその敷地が約2億円と大部分を占めていました。都心の不動産が値上がりを続けていることもあり、兄はどうしても自宅建物とその敷地を欲しがっていました。私は、兄に自宅建物とその敷地を譲る代わりにその他の財産を相続することとし、さらに2000万円ほどの代償金を支払ってもらうことになりました。そして、その旨の遺産分割協議書を作成し、それぞれが署名・押印しました。ところが、兄は、相続税を払ってお金がないなどと言って、約束した代償金を払おうとしません。作成した遺産分割協議書はなかったことにして、改めて遺産分割協議をすることはできないのでしょうか。」

相続に関して、遺産分割協議をやり直すことができないかとご相談いただくことがあります。

今回は、遺産分割の手続きとそのやり直しについてご説明します。

 

2、遺産分割の手続きとそのやり直し

⑴遺産分割の手続き

亡くなられた方(「被相続人」といいます。)について、相続人が二人以上いる場合、遺産は相続人間の共有になり、当然に遺産を構成する各財産が当然にどの相続人に帰属するか定まるものではありません。

最終的な遺産の相続人への帰属は、遺産の分割を行うことによって決まります。

遺産の分割は、原則として相続人間の協議によって行われます。通常、相続人間の協議がまとまった場合は、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議ができないときは、家庭裁判所に対し、遺産分割調停の申立てを行うことになります。

⑵遺産分割のやり直し

売買契約などの一般の契約であれば、例えば売買契約で買主が売買代金を支払わない場合には、売主は、買主の代金支払債務の債務不履行を理由として契約を解除することができます。遺産分割についても、同様に相続人が遺産分割協議に際して定めた債務を履行しない場合に、債権者である相続人がこの遺産分割協議を解除することができるか問題になります。遺産分割には、前述のとおり、遺産分割協議と遺産分割調停の方法がありますので、それぞれの場合についてご説明します。

①遺産分割協議の債務不履行解除の可否

遺産分割協議について、最高裁判所は、相続人の一人が遺産分割協議の際に負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は債務不履行を理由として解除することができないと判断しています。なぜなら、一方的な意思表示による解除を認めると法律関係が複雑になり、法的安定性が著しく害されてしまうことになるからです。

②遺産分割協議の合意解除の可否

なお、債務不履行に基づく解除とは異なり、遺産分割協議を相続人全員の合意の下で解除することは、法的安定性を害するおそれは少ないので許されると考えられています。

③遺産分割調停の債務不履行解除の可否

遺産分割調停が成立し、その調停調書の中で定められた代償金の支払いについて、債務者である相続人が債務を履行しないときに、債権者である相続人が債務不履行に基づき解除を主張できるか問題となった裁判例があります。この裁判例は、調停は審判と同一の効果を有するため、新たな審判または調停によらなければその分割の効果を消滅させることができず、債権者である相続人は調停における合意を債務不履行に基づき解除することができないと判断しました。

 

3、最後に

これまでご説明してきましたとおり、今回ご相談いただいた遺産分割協議をやり直すことは、相談者のお兄様の同意がなければ難しいです。したがって、お兄様に対し、代償金について訴訟等を提起して請求することを材料としながら、遺産分割協議のやり直しについて交渉していくことになるかと思います。

遺産分割協議に基づく債務の履行状況についてお悩みがありましたら、相続の専門家である弁護士にご相談下さい。

以上

 

【コラム】遺言控除

2015-12-09

1 今注目を集める「遺言控除」

自民党の家族の絆を守る特命委員会において、平成29年度を目途に、「遺言控除」制度の導入が検討されていることが報道されました(日本経済新聞平成27年7月9日朝刊)。

この遺言控除制度とは、有効な遺言による相続がなされた場合に、相続税の基礎控除額を上乗せするというものです。

平成27年1月1日より施行されている改正相続税制では、遺産に係る基礎控除が従前よりも引き下げられました。具体的には、これまでは、基礎控除額を5000万円+1000万円×法定相続人の数として算出していたのが、改正相続税制では、基礎控除額を3000万円+600万円×法定相続人の数として算出されることになりました。たとえば、相続人が配偶者と子2人であれば、相続税の基礎控除額は、従前は8000万円であったのが、4800万円に減縮されたことになります。

さらに、改正相続税制では、2億円超の金額に対する課税率もあがりました。

このように、相続の際の税負担は相当程度重くなっています。そのような中で、この「遺言控除」に関心をお持ちの方も多いかと思います。そこで、今回はこの「遺言控除」について、現時点で判明している部分でご説明をします。

 

2 制度の概要と議論状況

⑴ 制度の概要

遺言控除制度とは、相続税の基礎控除に加え、有効な遺言による相続の場合に、数百万円程度の基礎控除額を上積みするというものです。

仮に、遺言控除の額が仮に500万円であるとすると、有効な遺言による相続を行った場合には、税率(被相続人の財産全体から控除額を差し引いた額を法定相続分で案分して定まる額に応じて最低10%から最高55%の間で定まります。)に応じて、全ての相続人で合計50万円から275万円の相続税を支払わずにすむことになります。

⑵ 制度の目的と留意点

家族の絆を守る特命委員会では、この新しい控除を導入する目的として、遺言を広く普及させることにより、遺産相続を巡る紛争を防止し、若い世代への資産移転をスムーズにすることなどを挙げています。

たしかに、遺言を作成しないまま亡くなられた方の相続に関して、しばしば紛争が生じることがあります。遺言は、相続人の間で無用な紛争を発生させにくくする効果があります。このこと自体は、すでに広く認知されているでしょう。

しかしながら、遺言が作成されていた場合でも、遺言の内容や遺言が作られた時期や状況によっては、遺言の有効性を巡って新たに紛争が生じることはあります。

たとえば、認知症のために十分な判断能力を備えていない方に対し、その方の世話をしていた方が自分に有利な遺言を作成させた場合、その遺言の有効性について相続人間で問題となることがあります。これは、一般に信頼性が高く認められる公正証書遺言を作成した場合でも問題になることがあります。

あるいは、遺言を作成した場合であっても、一部の相続人には遺留分という固有の権利が認められています。遺言が作成された後になって、相続人間でこの遺留分の行使を巡った紛争になることもあります。

このような場合には、若い世代への資産移転をスムーズにするという目的を達成することは困難です。

したがって、遺言控除を利用する目的で遺言を作成する場合でも、その有効性や遺留分にも配慮し、慎重に作成する必要があります。

 

3 遺言の作成に弁護士が携わるメリット

遺産相続の専門家である弁護士に相談をすれば、遺言の内容がご希望に沿うようにすることはもちろん、有効性についても疑義が生じないようにさまざまなサポートをいたします。

遺言については様々なサービスが提供されていますが、特に、弊所では映像遺言サービスを提供しています。これは、遺言の内容や、あるいは遺言にとどまらず相続人に伝えたいことを、被相続人の方自らに話してもらい、その様子を映像にして遺言とともに残すサービスです。映像遺言を残すことで、相続人となる方に自分の意思に基づく遺言であることを確実にお伝えするとともに、家族に残したい言葉をいつまでも保管いたします。

映像(遺言)サービスのご利用に限らず、遺言や相続に関してお悩みがある場合は是非弊所の弁護士にご相談下さい。

以上

 

【コラム】遺言の撤回

2015-12-01

1 遺言の撤回に関するご相談

「私には、息子が二人います。同居していた長男に体調を崩した際の面倒をみてもらおうと、自宅の土地・建物を相続させる旨の公正証書遺言を作成しました。しかし、長男の浪費癖が発覚して私が注意したところ、長男との仲が険悪になってしまって長男が自宅を飛び出してしまいました。長男が出て行った後、次男が私の面倒を見に帰ってきて熱心に面倒を見てくれたので、次男への感謝の気持ちを込めて自宅の土地・建物を相続させたいと思っています。既に公正証書遺言を作成してしまっていますが、この遺言の内容を変更することはできるのでしょうか。」

遺言に関して、このような遺言の内容を変更したいというご相談をいただくことがあります。遺言の内容を変更したり、無かったことにすることを、遺言の「撤回」と言います。

今回は、遺言の撤回についてご説明させていただきます。

 

2 遺言の撤回

遺言の撤回は、遺言者が自由に行うことができます。そして、遺言を撤回する方法には、①新しく遺言をする方法、②遺言書を破棄したり、遺言により相続させるものを処分したりする方法の2つがあります。

まず、①の方法についてです。

この方法のうちの一つは、前に行った遺言を撤回する旨の遺言をするという方法です。例えば、「遺言者は、平成○年○月○日付で作成した公正証書遺言を全部撤回する。」というような文言の遺言を作成することが考えられます。

もう一つは、後から前に行った遺言と両立しない内容の遺言をする方法です。今回のご相談で考えると、次男へ自宅の土地・建物を相続させる、という遺言をすることになります。これにより、前に行った遺言は撤回されたものとみなされます。

そのため、日付の新しい遺言と日付の古い遺言では日付の新しい遺言が優先されることになりますが、日付の古い遺言の全部が無効になるわけではありません。あくまで、日付の新しい遺言と内容が食い違う部分に限り無効となります。

なお、日付の古い遺言が公正証書遺言である場合でも、新しい遺言は公正証書遺言である必要はなく、自筆証書遺言で行うこともできます。

次に、②の方法についてです。

わざと遺言書を破棄したり、遺言によって相続させるものを破棄・損壊したりすることにより、遺言を撤回したものとみなされます。ただし、公正証書遺言の場合は、公証役場に原本が保管されていますので、その正本や謄本を破棄するだけでは撤回することはできませんので注意が必要です。相続させるものを破棄・損壊するとは、例えば、遺言によって相続させようとしていた壺を破壊してしまうようなことを指します。相続させる対象が消滅してしまえば、その部分に対応する遺言の意味もなくなってしまうので、遺言が撤回されたことになるということです。

 

3 最後に

以上ご説明してきましたとおり、今回のご相談の場合には、次男に自宅の土地・建物を相続させる旨の遺言をすることで、長男に自宅の土地・建物を相続させる旨の遺言を撤回することができます。

前にした遺言の撤回以外にも、前にした遺言からの財産状況に応じた変更や遺言執行者を選任しておきたい、付言事項を追記したい等のご希望がある場合には対応させていただきますので、是非一度弁護士にご相談ください。

以上

 

【コラム】生命保険金の取り扱い

2015-11-26

1 生命保険金

 本人の亡くなった時に支払われる生命保険金は、本人が受け取ることはできません。生命保険金は、保険会社の商品によって、あらかじめ決めていた特定の人物に支払われることになっていたり、相続人に支払われるとなっていたり、特に何も記載がなかったりと様々な内容になっています。

 多額の生命保険が、例えば子のうちの一人に対して支払うことになっていた場合、それは相続財産になるのでしょうか。また、他の子や配偶者は、このような一人だけに支払われる生命保険金に対して、不公平であることを理由として異議を唱えることはできないのでしょうか。

 

2 生命保険金が相続財産となるかどうか

(1)生命保険金を誰が受給するか決まっている場合

  生命保険金を受給する人物が、保険の契約上あらかじめ決まっている場合は、生命保険金を受け取る権利は、受取人として指定されている者の固有の権利となると考えられています。したがって、相続財産には含まれません。その結果、遺産分割の対象にはなりませんし、遺留分算定の基礎財産にも含まれません。また、受取人が相続人かどうか関係なく受給することができることになります。

(2)生命保険人の受取人を指定していない場合

ア 受給者を「相続人」としている場合

     受給者について、単に「相続人」となっている場合は、一見、相続財産となりそうです。しかし、裁判所は、この場合でも「相続人」にあたる者を保険の受取人と指定しており、「相続人」が固有の権利を取得するとして、相続財産にはならないとしています。

              受取人である相続人の間でどのように生命保険金を分配するかは、保険契約の内容として決まっていればそれによります。決まっていなければ、判例上、民法の法定相続分の割合によることとなっています。

イ 特に何も指定されていない場合

    特に何も指定がない場合、今度こそ相続財産となるのでしょうか。しかしながら、ここでも判例は、保険約款に、被保険者の相続人に支払うという旨が記載されている場合は、やはり相続人が固有の権利を取得するとして、相続財産に含まれないとしています。

   約款にも何も記載がない場合に初めて、相続財産となることとなります。

 

3 他の相続人からの異議

 このように、相続財産にならないとすると、特定の相続人だけに生命保険金が支払われることで、著しい不公平が生ずるおそれがあります。

 このような場合には、保険金を受け取った相続人を「特別受益者」として扱うことがあります。ただし、かなり限定的であり、判例では、不公平が著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合に限って特別受益者として扱う余地を認めています。例えば、生命保険金の額が相続財産総額とほぼ同額とかなり高額である上に、受取人が特に負担を負うこともない場合は、著しい不公平といえるでしょう。

 

4 生命保険金への課税

 相続財産とならない生命保険金についても、相続税法上は「みなし相続財産」として取り扱われ,相続税の課税対象となります(なお、被保険者である被相続人が保険料を負担していた場合に限ります。保険受取人である相続人が保険料を負担している場合は、その相続人に対する所得税の問題となります。)。ただし、相続人一人について500万円までが非課税枠となります。

具体例として、相続人となる配偶者と子2人いる場合に、「相続人」を受取人とする生命保険金1,800万円が支払われ、これが法定相続分に従って、配偶者に900万円、子にそれぞれ450万円が支払われた場合を考えてみます。この場合、上記数式に当てはめると、配偶者は250万円、子はそれぞれ75万円が課税対象となります。

 

【コラム】中小企業の事業承継と遺留分に関する民法の特例

2015-11-19

1 中小企業の円滑な事業承継は喫緊の課題である

東京商工リサーチの2014年の調査(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20141002_01.html)によれば、現在、企業の代表者の平均年齢は60.6歳であると言われており、中小企業経営者の高齢化は深刻な状況となっています。これは、現経営者による後継者への事業の承継がスムーズに進んでいないことを示唆するものです。

戦後日本の経済・産業を支えてきた中小企業の代替わりがうまく行かないことによって、そのような中小企業が途絶えてしまうと、長年蓄積された高度な技術やノウハウが散逸するおそれがあり、国内の経済・産業全体にとって大きなマイナスになりかねません。

そこで、このような事態に陥らないよう、高齢となった多くの中小企業の経営者による円滑な事業承継を実現・推進していくことが我が国経済産業界における喫緊の課題であると考えられます。

 

2 中小企業経営承継円滑化法の成立

 平成20年5月9日、中小企業の円滑な事業承継を支援することを目的とした「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(中小企業経営承継円滑化法)が成立しました。この法律では、3つの大きな柱として、①遺留分に関する民法の特例、②資金の供給等の金融支援制度、③相続税・贈与税の納税猶予の特例が定められていますが、今回は、①遺留分に関する民法の特例についてご紹介します。

 

3 遺留分に関する民法特例

  民法上の遺留分制度の詳細については、遺留分と遺留分減殺請求において詳しく説明していますのでそちらをご参照ください。

(1)制度の背景

ア 財産の分散防止

現経営者の推定相続人の一人(例えば、現経営者の長男)に事業を承継させたいという場合に、相続によって他の推定相続人に自社株式や事業用資産が分散する事態はなるべく避けなければなりません。しかし、生前贈与や遺言によって後継者(長男)に自社株式や事業用資産のすべてを集中させようとしても、他の相続人の遺留分を侵害することとなってしまう場合は、事業承継がうまくいかないことがあります。民法上は、遺留分の放棄という制度もありますが、他の相続人にとってメリットがなく、かつ、放棄する相続人自らがわざわざ相続開始前に家庭裁判所で申立てをして個別に許可を受けなければならないといった手続負担もあったことから、現実には非常に困難なもので、ほとんど利用されていませんでした。

イ 後継者と後継者以外の他の相続人との間で生じる不平等問題

また、現経営者から後継者に株式が生前贈与されていた場合、後継者の努力で株価が上がれば上がるほど、遺留分の対象となる基礎財産も相続開始時を基準に評価されるため、他の相続人の遺留分が増大する結果となってしまうという問題もありました。

(2)特例の内容

そこで、中小企業経営承継円滑化法は、このような遺留分に関する民法の特例として、経営者の推定相続人全員の合意により、経営者から推定相続人の一人である後継者に生前贈与された自社株式や事業用資産を遺留分算定の基礎財産から除外する「除外合意」と、遺留分算定の基礎財産に算入する際の価額を固定する「固定合意」を設けました。ご注意いただきたいのは、あくまでも生前贈与を念頭に置いた制度であるということです。事前に問題解決を図っておくことで、相続開始後の紛争を未然に防ぐことを目的としています。

ア 除外合意

除外合意とは、後継者が現経営者から贈与等によって取得した自社株式その他一定の財産について、現経営者の推定相続人全員の合意によって、遺留分算定の基礎財産から除外することができるという制度です。

このように、遺留分減殺の対象から外すことで、遺留分の放棄をしてもらう必要がなくなり、自社株式等が相続により分散することを防ぐことが可能になります。

イ 固定合意

固定合意とは、後継者が現経営者から贈与によって取得した自社株式について、現経営者の推定相続人全員の合意によって、遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意時点の価額に固定できるという制度です。

この合意によって、遺留分算定の基礎財産に算入にあたり、この株式価額は合意のした時点の価額に固定されるので、後継者は、経営努力による株式の価値上昇のせいで遺留分が増大してしまうというマイナス面を考えなくてもよくなり、経営に専念できます。

なお、この合意にあたっての株式の価額は、適正さを担保するため、弁護士などの証明が必要となっています。

 

4 終わりに

  今回は、中小企業経営承継円滑化法における遺留分に関する民法の特例についてご説明しました。事業承継は法務・税務・会計など様々な要素が関係してくる複雑かつ煩雑なものです。制度をうまく活用して円滑な承継を進めるためにも、専門家に一度ご相談いただくことをおすすめします。

 

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