Archive for the ‘相続欠格・相続廃止’ Category

【コラム】相続人の廃除

2015-05-01

1 「放蕩息子に相続させたくない!」

「私は長男に私の会社の経営やマンションの管理を任せていたのですが、長男はギャンブルにのめり込んでおり、事業資金や賃料収入をギャンブルに注ぎこみ、さらに多額の借金をして、その肩代わりのために私の自宅まで売却せざるを得なくなりました。会社の事業資金の使い込みを許せなかったので、長男を勘当して会社の代表取締役から解任したのですが、そのことを不満に思って、虚偽の金銭消費貸借契約書を作成して民事紛争を惹き起こし、私と敵対する証言までしました。また、長男は勘当された後も借金を繰り返し、破産したそうですが、その後も私に引越代等と言って金を借りようとしてきます。私は長男には立ち直って欲しいと思っていますが、あまりの放蕩ぶりにあきれ果てましたし、他の子どもたちとの公平もあるので、私の財産を長男に相続させたくないです。何かよい手段はないでしょうか。」

このような場合、被相続人たる相談者は、裁判所に対して、本来相続人となることができる者(長男)の遺産を相続する権利を奪うように申立てを行うことができます(推定相続人の廃除)。

以下では、推定相続人の廃除制度についてご紹介します。

 

2 推定相続人の廃除制度(民法892条)

 推定相続人の廃除は、本来相続人となる者について、虐待、重大な侮辱、著しい非行といった家族としての共同生活や信頼関係を破壊する事情がある場合に、被相続人の請求により、家庭裁判所が審判等によって被相続人の宥恕(審判時点で推定相続人を許しているか)や相続人の改心等の事情を考慮して相当と認めるときに、その者の相続権を喪失させる制度です。

 今回ご相談いただいたような場合ですと、会社の事業資金の使い込みやその後の虚偽の金銭消費貸借契約書の作成等は悪質性が高く、相談者への経済的・精神的な苦痛の大きいことから、相談者と長男との間の家族としての共同生活や信頼関係を破壊するに足る「著しい非行」に該当しうるので、家庭裁判所に対して審判を申し立てることができます。

また、相談者が長男の立ち直りを願っているとしても、それを超えて長男を許すことは考えておらず宥恕まではしていません。また、長男は会社資金の使い込みを理由に勘当された後も借金を繰り返して破産するに至り、さらに破産後も相談者に金を無心する等していることから長男の改心も期待できません。このような事例では、長男の相続権を喪失させることが相当であるとの審判がなされる可能性が高いと思われます。

 

3 最後に

裁判所は、推定相続人の具体的な言動のほか、その言動に至った経緯・原因、その言動の継続性、被相続人の側の落ち度の有無、推定相続人の日頃の暮らしぶり、被相続人と推定相続人との関係性等さまざまな事情を考慮して推定相続人の廃除を認めるべきかどうかを判断します。廃除が認められるに値する事情があるかどうかの判断は、法的専門家による法的アドバイスが必要不可欠な分野です。推定相続人の廃除に関して思い当たる事情がおありの場合は、相続の専門家である弁護士にご相談ください。

以上

 

【コラム】相続欠格について

2015-04-23

1 「遺言書を隠したら[捨てたら?]どうなるの?」

「私の兄は、父と折り合いが悪く長年絶縁状態にあり、父は常々、『財産は兄にはやらん』と言っていました。しかし、父が昨年死んだ後、兄は突然父の葬式に来て、『今までの親不孝を償いたい』と葬式その他様々な手伝いをしていきました。私は、父の意向を知っていましたが、兄が熱心に葬式の手伝い等をしてくれたこともあり、兄弟で相続分に応じた遺産を相続しました。ところが、後日になって兄が、一切の財産を私に相続させる旨の父の遺言書を発見し、自己に不利になると考え遺言書を捨てていたことがわかりました。兄弟とはいえ、父の財産を目当てに突然帰ってきた上、父の遺言書まで捨てた兄をどうしても許せません。兄に対して何か請求ができないでしょうか。」

このような場合には、相続人となることができる者であっても、財産を相続する権利を失うことがあります(相続欠格)。

本件でも、相談者の兄は、相談者の父の財産を相続する権利を失う可能性があり、その場合には、相談者の兄が相続した財産を取り戻すことができます。

以下では、相続欠格の制度についてご紹介します。

 

2 相続欠格(民法891条)

 相続欠格とは、本来相続人となることができる者が、不正な行為をした場合に、裁判等の法的な手続を経ることなく、その者の相続する権利を失わせる制度です。

そして、被相続人の遺言書を捨てたり、偽造したりすることは、相続欠格となる不正な行為の例として挙げられています(同5号)。

もっとも、この場合、偽造等の行為が、相続に関して不当な利益を得ることを目的としてなされたことが必要であると判例上考えられています。例えば、偽造等の行為の目的が、遺族間のトラブルの発生・拡大を防ぐことにあった場合や被相続人の意思実現のためであった場合には、相続欠格にあたらないと考えられています。

本件では、相談者の兄は、遺言書に自分の相続する財産の記載がなく気に食わなかったので、被相続人である父の遺言書を捨てています。これは、自分の相続する財産を増やすという不当な利益を得ることを目的として、相続に関する被相続人の遺言書を破棄したと言えますから、相談者の兄は父の相続人となることができません。

相談者は、相談者の兄が相続した財産について、その財産を相続する権利を侵害されていますから、相続財産の回復を請求することができます。

なお、相続欠格となった者に子がいる場合は、その子が相続欠格となった者に代わって相続人となり、相続欠格となった者が相続した財産を取り戻すことはできませんので、ご注意ください。

 

3 最後に

既に説明いたしました遺言書の破棄や偽造のほか、故意に被相続人等を殺した場合や詐欺等によって自分の思うとおりの遺言をさせた場合にも相続欠格となることがあります。思い当たる事情がある場合には、相続の専門家である弁護士にご相談ください。

弊所の弁護士は、相続に関して幅広く多くの経験を積んでおり、適切なアドバイスをいたします。

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