Archive for the ‘相続財産の範囲’ Category

【コラム】遺言控除

2015-12-09

1 今注目を集める「遺言控除」

自民党の家族の絆を守る特命委員会において、平成29年度を目途に、「遺言控除」制度の導入が検討されていることが報道されました(日本経済新聞平成27年7月9日朝刊)。

この遺言控除制度とは、有効な遺言による相続がなされた場合に、相続税の基礎控除額を上乗せするというものです。

平成27年1月1日より施行されている改正相続税制では、遺産に係る基礎控除が従前よりも引き下げられました。具体的には、これまでは、基礎控除額を5000万円+1000万円×法定相続人の数として算出していたのが、改正相続税制では、基礎控除額を3000万円+600万円×法定相続人の数として算出されることになりました。たとえば、相続人が配偶者と子2人であれば、相続税の基礎控除額は、従前は8000万円であったのが、4800万円に減縮されたことになります。

さらに、改正相続税制では、2億円超の金額に対する課税率もあがりました。

このように、相続の際の税負担は相当程度重くなっています。そのような中で、この「遺言控除」に関心をお持ちの方も多いかと思います。そこで、今回はこの「遺言控除」について、現時点で判明している部分でご説明をします。

 

2 制度の概要と議論状況

⑴ 制度の概要

遺言控除制度とは、相続税の基礎控除に加え、有効な遺言による相続の場合に、数百万円程度の基礎控除額を上積みするというものです。

仮に、遺言控除の額が仮に500万円であるとすると、有効な遺言による相続を行った場合には、税率(被相続人の財産全体から控除額を差し引いた額を法定相続分で案分して定まる額に応じて最低10%から最高55%の間で定まります。)に応じて、全ての相続人で合計50万円から275万円の相続税を支払わずにすむことになります。

⑵ 制度の目的と留意点

家族の絆を守る特命委員会では、この新しい控除を導入する目的として、遺言を広く普及させることにより、遺産相続を巡る紛争を防止し、若い世代への資産移転をスムーズにすることなどを挙げています。

たしかに、遺言を作成しないまま亡くなられた方の相続に関して、しばしば紛争が生じることがあります。遺言は、相続人の間で無用な紛争を発生させにくくする効果があります。このこと自体は、すでに広く認知されているでしょう。

しかしながら、遺言が作成されていた場合でも、遺言の内容や遺言が作られた時期や状況によっては、遺言の有効性を巡って新たに紛争が生じることはあります。

たとえば、認知症のために十分な判断能力を備えていない方に対し、その方の世話をしていた方が自分に有利な遺言を作成させた場合、その遺言の有効性について相続人間で問題となることがあります。これは、一般に信頼性が高く認められる公正証書遺言を作成した場合でも問題になることがあります。

あるいは、遺言を作成した場合であっても、一部の相続人には遺留分という固有の権利が認められています。遺言が作成された後になって、相続人間でこの遺留分の行使を巡った紛争になることもあります。

このような場合には、若い世代への資産移転をスムーズにするという目的を達成することは困難です。

したがって、遺言控除を利用する目的で遺言を作成する場合でも、その有効性や遺留分にも配慮し、慎重に作成する必要があります。

 

3 遺言の作成に弁護士が携わるメリット

遺産相続の専門家である弁護士に相談をすれば、遺言の内容がご希望に沿うようにすることはもちろん、有効性についても疑義が生じないようにさまざまなサポートをいたします。

遺言については様々なサービスが提供されていますが、特に、弊所では映像遺言サービスを提供しています。これは、遺言の内容や、あるいは遺言にとどまらず相続人に伝えたいことを、被相続人の方自らに話してもらい、その様子を映像にして遺言とともに残すサービスです。映像遺言を残すことで、相続人となる方に自分の意思に基づく遺言であることを確実にお伝えするとともに、家族に残したい言葉をいつまでも保管いたします。

映像(遺言)サービスのご利用に限らず、遺言や相続に関してお悩みがある場合は是非弊所の弁護士にご相談下さい。

以上

 

【コラム】死亡退職金の相続

2015-10-19

1 退職金とは

  退職金は、在職中の功績をたたえて退職時に勤めていた本人が受け取るのが通常です。

しかし、会社在職中に本人が亡くなってしまった場合には、本人は退職金を受け取ることができません。定年間近で本人がお亡くなりになってしまった場合と、定年直後にお亡くなりになってしまった場合で取り扱いが異なってしまうのでしょうか。

 

2 死亡退職金とは

実は、本人が会社在職中に亡くなってしまった場合でも、ご家族に退職金が遺族に支給される場合があります。これが、死亡退職金です。

また、家族や兄弟で経営している会社であれば、定年のない役員が亡くなるまで在籍し、退職金が死亡退職金となるような場合もあります。

では、どういった場合に死亡退職金が支給されるのでしょうか。

死亡退職金が遺族に対して支給されるには、まず、故人が退職金を受け取れる地位になければなりません。会社の就業規則(会社で働く際のルールを定めたもの)には、一般的に、「勤続◯◯年以上の労働者が退職又は解雇された時は、退職金を支給する」などと書いてあります。さらに、一般的な就業規則には、「退職金は、支給事由が生じた日から、○○ヶ月以内に、退職した者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う」などと記載されています。この、「死亡による退職の場合はその遺族」という記載が、死亡退職金が遺族に支給される根拠となります。

 

3 死亡退職金が相続財産となるかどうか

(1)死亡退職金を誰が受給するか決まっている場合

   就業規則などで、あらかじめ死亡退職金を誰が受給するかが決まっている場合を考えてみます。この死亡退職金は、相続財産には含まれません。あくまで指定された受取人個人の財産となるのです。したがって、決まっている受給者が原則的には全てもらうことができますし、相続放棄をしても受給できます。国家公務員の死亡退職金も、相続財産になりません。地方公務員も多くは同じ扱いです。

そうすると、相続で問題は生じないようにも思えますが、実はここに落とし穴があります。

お亡くなりになった方の相続人が複数いて、そのうちの1人に対して、1億円の死亡退職金が支払われた場合を考えてみましょう。この場合、お亡くなりになった方の自宅、預貯金などの相続財産が全体で5000万円だったとすると、5000万円の相続財産を相続人で分割すると、1億円の死亡退職金を受け取った人のみが実際には多くの財産を得てしまうこととなります。これは不公平だということで、法律では、1億円の死亡退職金を受け取った人には特別受益があるとして、5000万円の相続財産を分割する際、取り分を調整するということが行われます。

(2)死亡退職金を誰が受給するか決まっていない場合

   この場合は、退職金には、給与の後払的性格があるとして、未払賃金と同様に考え、相続財産となると考えられています。

ただし、(1)のような形で就業規則を作成している会社が一般的です。勤め先の就業規則を確認しておくことが、必要になります。

 

 

4 死亡退職金への課税

  相続財産とならない死亡退職金でも、相続税の対象となる場合がありますので注意が必要です。

  法律上、退職手当金等を遺族が受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の対象となります。受け取る人が相続人であれば相続財産として、相続人でない場合は遺贈によって取得したものとみなされる扱いとなっています。

【コラム】空き家になった実家をどうするか

2015-08-12

平成27年2月26日に、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)が施行され、同年5月26日は関連の規定も施行されました。この法律は、適切な管理をしていない空き家について、倒壊の恐れや衛生、景観等に地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空き家等の活用のため対応が必要とされて制定されました。

この法律の施行により、「特定空家」として指定された空き家については、行政による空き家の管理などについて指導、勧告がなされる可能性があり、場合によっては、行政が空き家を取り壊してその費用を請求する(代執行)ことも法律上は認められています。

 

子どもたちは東京などの大都市圏で暮らしていて、地方にある実家には親が暮らしていたところ、親が亡くなってしまい、実家が空き家になってしまったという場合、地方の実家を管理するのもなかなか大変なことも多いでしょう。

相続が発生した場合、実家にはもう誰も住まないとしても、建物を売却しようとすれば煩雑な手続きが必要となり手間がかかります。相続財産にそれほど大きな価値があるものでない場合には、遺産分割をしまいまま、なんとなく時間だけが過ぎていき、気が付けば実家が適切な管理をされないまま老朽化しているということもあるでしょう。

しかし、このようになってしまった空き家に対して、上記の空家対策特別措置法の要件を満たした場合には、行政が指導・勧告等するおそれがあります。それ以外にも、その空き家や塀などが倒壊し、通行人等が怪我をした場合には、相続人が建物の所有者として損害賠償責任を問われる可能性もあります。

 

相続問題というと、価値のある財産の取り合いで揉めるというイメージがあるかもしれません。しかし、相続財産に、あまり価値がなく特に欲しがる相続人がいない場合にも、誰が引取るかという問題が発生しうるのです。建物の老朽化による危険や周辺環境の悪化を防ぐためにも、相続が発生した場合には速やかに遺産分割手続を行い、適切な対処をすることが大切になります。

また、親としても、自分の亡き後、子どもたちが揉めないように遺言を作成し、仮に住む者がいなくなり危険な空き家になることが想定されるような場合には、建物の売却などの煩雑な手続きを子どもたちなどの相続人がしなくても済むよう弁護士などの専門職を遺言執行者として指定することも有用です。

 

 

 

【コラム】未受給年金の相続

2015-07-23

1 年金に対する不安

  年金制度には現在、強い疑念が寄せられています。最近では、125万件の個人情報が流出したという報道がなされましたし、2007年ころには「消えた年金」問題もありました。さらに、少子高齢化によって年金の財源確保が確保できるのかといった根本的な問題など、多くの問題点が指摘されており、将来的な見通しに不安をお持ちの方も多いかと思います。

2 支払われるはずの年金が払われていない場合

  今回の情報流出は、社会保険庁のコンピュータがウィルスに感染して発生しました。今回は情報の流出でしたが、例えば、コンピュータがクラッキングされて年金情報を改ざんされることもありえます。仮に年金受給者がこの改ざんされた年金額を受給し、亡くなったあとで改ざんが発覚し、本来は年金をもっと受給もらえていたことが判明したような場合、この未払の年金は誰に支払われるのでしょうか。

  同様の問題は、2007年の「消えた年金」問題の時にも既に発生しておりました。受給者が亡くなった後に、年金記録の訂正によって未払分の存在が判明した場合、どのように扱われるのかが問題になります。

  なお、これから説明する話は、基本的には国民年金についてのお話ですので、あらかじめご了承下さい。

3 未受給年金は相続の対象になる?

  年金も、お金を支払ってもらう権利ですから、債権であると考えれば、年金を受給できる権利自体が相続の対象になりそうです。しかし、実は未受給年金は相続の対象にはなりません。最高裁判所の判決にもなっており、相続性は否定されています。

  現実に発生しているにもかかわらず未支給となっている国民年金については、国民年金法という法律に規定があります。これによれば、「配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と定められており(19条)、配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹という順で、未支給年金の支給を請求できることになっています。

  これは、民法上の相続のルールと似ているように見えてかなり異なります。民法上の、相続では、例えば被相続人の相続財産が100万あって、配偶者と子1人が相続人だとすると、配偶者と子は50万ずつ相続することになりますが、100万円の未受給年金がある場合で、配偶者と子がいる場合には、配偶者が全額を請求できることになります。このようにルールが異なる理由としては、年金受給者の収入に頼っていた遺族の生活保障のためであると説明されています。

  このような特別ルールをあえて国民年金法は定めているため、未受給年金については、通常の相続によるのではなく、この特別ルールによるのだということになっているようです。

4 年金も相続も複雑

  このように、国民年金の未受給年金についての制度の特殊性を見てみても、年金という制度がいかに複雑なものであることがお分かりいただけたかと思います。年金には国民年金の他にも厚生年金や共済年金があり、それぞれに法律でルールが決まっています。

  一度相続が起これば、他の様々な問題とともに、年金まつわる問題も同時に発生する可能性があります。こういった年金と相続について疑問がある場合は、弁護士などの専門家に相談してみるのが良いと思います。

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