Archive for the ‘遺言’ Category

【コラム】遺言によるトラブル防止のために。付言事項という予防線

2016-11-22

1.遺言の限界

遺言とは、自ら築いた財産を、死後、その意思に従って遺された人に分配するための制度です。ところが、遺言の内容は、必ずしもそのまま実現されるとは限りません。以下の事例を見ながら、遺言からどのようなトラブルが生じるか、検討してみましょう。

 

⑴登場人物

今回遺言を作成するのは、80代の男性A。Aには妻がいましたが、既に先立たれていますので、法定相続人は、50代の子である長男Bと、次男Cの2人のみです。

 

⑵遺言者Aの考え

Aは、自分がこれまでに働いて築いた財産を、自分の子であるBかCのうち、より自分の家計を助けてくれ、また、自分の生活を支えてくれた者に譲ろうと考えました。

経済面では、Bは高校卒業後すぐに家を出て独立して働きに出たため、Aに学費や生活費の負担もさほどかけていませんでした。一方、Cは、Aに大学の学費負担をさせた上、社会人になってからも何かとAに金銭的な援助をしてもらっていました。

また、生活面では、Bは、Aが妻に先立たれ、段々と体調も悪くなっていった時、わざわざAの近くに引っ越して一人で暮らすAの家事を手伝ってくれました。一方、Cは遠くに住んだまま、Aにあまり連絡もよこしませんでした。

このような事実を踏まえて、Aは、自分が亡くなった後、これまで金銭的な負担もかけず、家事を手伝うなどしてくれたBに残った財産を全て譲ろうと考え、その旨の公正証書遺言を作成し、自分が亡くなった後に備えたのです。その後程なくして、Aは死亡しました。

 

⑶法定相続人Cの考え

ここで、Cに視点を移してみましょう。Cは、Aが亡くなった後、遺言が残されていることを知り、その内容を見ました。そこには、「相続財産は全てBに相続させる」という言葉があるのみでした。何故自分は相続を受けられないのか、その理由について知ることができません。Aの遺言に納得できなかったCは、「BがAの自宅の近くに住み、家事を手伝うために週に数度、Aの家に出入りしていた。ひょっとしたら、Bは日頃からAに何か吹き込んでいたのかもしれない。」などと考え、Bに対して遺言の内容について不服を述べますが、Bはこれに取り合いませんでした。

ところで、民法は遺留分減殺請求という制度を設け、相続を受けられなかった法定相続人(ただし亡くなった人の兄弟、姉妹を除く)は、その法定相続分(この事例でいうと、BとCが2分の1ずつ)の半分までは、その取り戻しを請求することができます。

Cは、上述のとおり、遺言の内容に不服があったことから、この遺留分減殺請求をすることとしました(今回でいえば、相続財産全体のうち4分の1までの財産をBから取り戻すことができます)。

その後、結局、CとBの争いは、調停を経てもまとまらず、最終的に遺留分減殺請求訴訟にまで発展することとなりました。

 

2.遺言の内容から生じた訴訟

このように、Cが遺留分減殺請求をした場合、遺言を通じて残されたAの遺志は、残念ながら100パーセントは尊重されないことになります。さて、このように兄弟間での争いが訴訟にまで至ってしまったことの原因は、どこにあるのでしょうか。

ひょっとすると、その原因は遺言の内容そのものではなく、CがAから「きちんと説明を受けることが出来なかった」ことにあるのかもしれません。共に過ごした時間が長い分、家族の問題は多分に感情が入り込みます。感情の部分で納得できれば、訴訟という形で争いが顕在化することもなかったかもしれません。

 

3.付言事項って?

上記のような訴訟トラブルを避けるための方法として、遺言に「付言事項」を記載することが考えられます。今回は、この「付言事項」とは何かご説明しましょう。

まず、遺言の内容には、大きく分けて「法定遺言事項」と、「付言事項」があります。

前者の「法定遺言事項」は、遺言に記載することによって法的な効力を生じる事項を言います。例えば、相続財産の何を誰に譲るかといった内容(相続分の指定)などが挙げられます。一方、後者の「付言事項」は、「法定遺言事項」以外の事項、すなわち法的な効果を持たない内容を指します。

この「付言事項」は、法的な効力を持たない分、自由にその内容を記載することができます。最もよくされるのは、何故そのような内容の遺言となっているかの理由を記載した、遺言者の相続人へのメッセージです。遺言者が何を考え、残された家族にどう過ごして欲しいのかを記載することによって、家族への想いを残すことができるのです。

今回の事例では、Cはひょっとしたら、他ならぬAから、何故CではなくB

に財産を相続させるのかの説明を受け取れば、自分がAの財産を相続できない理由に納得し、Bに不服を述べることはなかったかもしれません。また、自分の親であるAから「BとCは、兄弟として仲良く過ごして欲しい」といったメッセージを受け取れば、兄であるBに対し、訴訟など提起することもなかったかもしれません。その意味で、法的にはともかく、付言事項には事実上の価値があると言えるでしょう。

遺言の内容のうち、付言事項は法的な意味を持つものではありません。しかし、多数の相続トラブルを目の当たりにしてきた弊所の弁護士は、このような事実上の効果も踏まえ、適切な内容の遺言を作成できるようアドバイスすることができます。さらに、弊所では映像で遺言者のメッセージを残す映像遺言サービスも行っています。大切な家族だからこそ、気持ちの部分もしっかり残したい。そのような方のご依頼を、弁護士一同お待ちしております。

 

【コラム】認知と相続の関係

2016-09-05

1.資産家の相続財産を狙って?

最近、アメリカの有名ミュージシャンであるプリンスが急逝しました。一部報道によれば、プリンスの遺した遺産は、日本円にして数百億円に上ると言われています。

このような資産家が亡くなると、「自分はあの人の子供である」と突如主張する人が現れることがあります。実際に最近のニュースでは、「自分はプリンスの子供である」と裁判所に訴えを起こした人物が、DNA鑑定の結果、親子関係を否定されたと報道されています。この人物が何を考えて、プリンスの死去後に訴えを起こしたのかは判然としませんが、動機として推測できるのは、「プリンスの「子」として認められれば、プリンスの相続人になれる(相続財産を受け取ることができる)」ということでしょう。

 

2.「子になる」ための「認知」という方法

ある男性に法律上の婚姻関係(婚姻届を出して、結婚している夫婦関係)のある妻がいる場合、妻から生まれた子供は、法律的にも男性の「子」であると推定されます。ところが、もし法律上の婚姻関係にない女性(いわゆる「愛人」や「妾」、「内縁の妻」など)との間に子供ができた場合、その子供は、当然にその男性の「子」となるわけではありません。そのような子供を法的に自分の「子」としたい場合には、「認知」という手続きを行う必要があります。TVドラマなどで「あの人には愛人がいて、認知している子供もいるらしい。」といったセリフが語られた場合、それは法的に「妻以外の女性との間に親子関係のある(相続財産を受け取れる)「子」がいる」ということを意味します。

ところで、結婚している妻との間に生まれた「子」のことは「嫡出子」といい、そうでない女性との間に生まれた「子」を「非嫡出子」と呼びますが、かつては相続できる財産に差がありました。非嫡出子は、嫡出子の半分の財産しか相続できなかったのです。ところが、平成25年9月4日の最高裁判決で、非嫡出子の法定相続分が嫡出子の半分であることは、違憲である旨の判示がなされました。これを受け、平成25年12月5日、民法が改正され、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じとなっています(ただし、適用は平成25年9月5日以降に開始した相続)。

つまり、父親の認知を受けると、嫡出子と同じ相続の権利を得ることになるのです。

 

3.相続のための認知

非嫡出子は、認知を受けることにより、法定相続人の一人となり、父親の財産を相続することができるようになります。しかも今では、その相続分も嫡出子と異なることはありません。もし、非嫡出子である方がまだ認知を受けていないのであれば、財産を平等に得られるという意味で、認知を受けるという選択肢をお勧めします。

認知の方法は、父親から届出を行うことが一般的です。すでに父親が死んでしまっていたり、認知に反対している場合には子供の方から認知の訴えを提起することもできます。

その他にも、実は愛人がいて、その愛人との間に子供がおり、自分の財産を相続させてやりたいが、その方法が分からない、あるいは生きているうちにはそれを明らかにはできない方もいらっしゃるかもしれません。このような場合、遺言によって認知を行うこともできます。これにより、生前のトラブルを避けながら、自分の子供の権利を守ることもできるのです。

弁護士は守秘義務を負っていますので、依頼者の秘密を漏えいすることはありません。

お悩みの方がいらしたら、お気軽にご相談に来られてはいかがでしょうか。

【コラム】赤ペンで斜線を引いた遺言書の行方

2016-08-22

1.事件の概要

「この間、私の父が亡くなったのですが、金庫の中から亡くなった本人が書いたと思われる自筆証書遺言が見つかりました。そこには、大半の財産を他の兄弟に譲るという内容が。自筆証書遺言としては、形式的には有効なものと思われるのですが、一点だけ、腑に落ちない部分があるのです。

その自筆遺言証書には、文面全体に大きく、赤いボールペンで斜線が引いてあるのです。」

民法には、被相続人が自筆証書により遺言をすること(手書きで遺言書を作ること)を認めています。一方で、民法は、「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。」と規定しています。「遺言書を破棄」というのは、典型的には、遺言書を破り捨てるような場合をいいます。

今回の事件で問題になったのは、破り捨てたのではなく、「赤いボールペンで文面全体に斜線を引いた」というものです。果たしてこれは「破棄」にあたるのでしょうか?

これは、最近最高裁まで争われた事件の概要です。

 

2.裁判所の判断

高裁では、遺言書に赤い斜線を引いただけでは、もともと書いてある文書の内容が判読できる以上、「破棄」とはいえない、として、遺言の内容を有効としました。

ところが最高裁は、これとは逆の判断をしたのです。曰く、「本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は、その行為の有する一般的な意味に照らして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失われる意思の表れとみるのが相当である」と。

この判断に対しては色々な意見があるかもしれません。「最高裁のいうことはもっともだ」というものや「「破棄」っていう言葉と離れすぎていないか?」など。

 

3.自筆証書遺言のリスク

最高裁まで争われたというこの事件の評価は人それぞれでしょう。しかし、本当はもっと手前の部分に問題があるかもしれません。

民法は、確かに、自筆証書遺言を遺言の方式の一つとして認めています。しかし、民法は同時に、その有効性を厳しく制限しています。民法968条1項は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」としています。例えば署名だけ自筆で、残りはパソコンで作った書面を作っても、法的に有効とはみなされません。厳格に法律の要件を満たした書面を作らなければ、被相続人の遺志は実現されないのです。今回の事件も、自筆証書であるがゆえに、最高裁まで訴訟を続けなければならなかった、と言えるでしょう。

しかも、自筆証書遺言は、保管を厳重にしなければなりません。誰かに捨てられたり、誰にも発見されないままでいると、被相続人の遺志は誰にも伝わらないまま、闇の中へと消えてしまいます。

 

4.リスクの回避方法

以上のようなリスクを回避するには、やはり相続の専門家である弁護士に相談するのが一番でしょう。自筆証書遺言を作成したり、その内容を変更したりしたい場合に、適切なアドバイスをすることができます。

また、公証役場で作成する公正証書遺言を作成するのもリスクを回避するのに有効です。公正証書遺言は、作成と同時に、公証役場に原本が保管されます。再発行が出来るので紛失という危険は避けることができますし、遺言者が亡くなった後は、法定相続人などは公証人役場にいけば遺言検索システムで公正証書遺言の有無を確認できるので、誰にも発見されないままになるリスクは低いといえます(なお、遺言者が亡くなる前は遺言者本人しか遺言検索システムで公正証書遺言の有無を確認できないため、遺言者が言わない限り作成したことを知られることはありません)。また、自筆証書遺言の場合のトラブルにありがちな、「被相続人に無理矢理書かせた」と言った文句を言われるリスクも低いと言えます。さらに、撤回をしたいときには、その旨を記載した撤回の公正証書遺言を作成することで、赤色ボールペンで文面に斜線を引くよりも確実にその内容を撤回、訂正することができます。

遺言の内容についても、専門家として、無事に相続人に財産が行き渡るよう遺言執行者を務めたり、付言事項によって相続人にメッセージを残すことも可能です。

遺言についてお悩みの方は、是非一度弊所にご相談ください。

【コラム】遺言の撤回

2015-12-01

1 遺言の撤回に関するご相談

「私には、息子が二人います。同居していた長男に体調を崩した際の面倒をみてもらおうと、自宅の土地・建物を相続させる旨の公正証書遺言を作成しました。しかし、長男の浪費癖が発覚して私が注意したところ、長男との仲が険悪になってしまって長男が自宅を飛び出してしまいました。長男が出て行った後、次男が私の面倒を見に帰ってきて熱心に面倒を見てくれたので、次男への感謝の気持ちを込めて自宅の土地・建物を相続させたいと思っています。既に公正証書遺言を作成してしまっていますが、この遺言の内容を変更することはできるのでしょうか。」

遺言に関して、このような遺言の内容を変更したいというご相談をいただくことがあります。遺言の内容を変更したり、無かったことにすることを、遺言の「撤回」と言います。

今回は、遺言の撤回についてご説明させていただきます。

 

2 遺言の撤回

遺言の撤回は、遺言者が自由に行うことができます。そして、遺言を撤回する方法には、①新しく遺言をする方法、②遺言書を破棄したり、遺言により相続させるものを処分したりする方法の2つがあります。

まず、①の方法についてです。

この方法のうちの一つは、前に行った遺言を撤回する旨の遺言をするという方法です。例えば、「遺言者は、平成○年○月○日付で作成した公正証書遺言を全部撤回する。」というような文言の遺言を作成することが考えられます。

もう一つは、後から前に行った遺言と両立しない内容の遺言をする方法です。今回のご相談で考えると、次男へ自宅の土地・建物を相続させる、という遺言をすることになります。これにより、前に行った遺言は撤回されたものとみなされます。

そのため、日付の新しい遺言と日付の古い遺言では日付の新しい遺言が優先されることになりますが、日付の古い遺言の全部が無効になるわけではありません。あくまで、日付の新しい遺言と内容が食い違う部分に限り無効となります。

なお、日付の古い遺言が公正証書遺言である場合でも、新しい遺言は公正証書遺言である必要はなく、自筆証書遺言で行うこともできます。

次に、②の方法についてです。

わざと遺言書を破棄したり、遺言によって相続させるものを破棄・損壊したりすることにより、遺言を撤回したものとみなされます。ただし、公正証書遺言の場合は、公証役場に原本が保管されていますので、その正本や謄本を破棄するだけでは撤回することはできませんので注意が必要です。相続させるものを破棄・損壊するとは、例えば、遺言によって相続させようとしていた壺を破壊してしまうようなことを指します。相続させる対象が消滅してしまえば、その部分に対応する遺言の意味もなくなってしまうので、遺言が撤回されたことになるということです。

 

3 最後に

以上ご説明してきましたとおり、今回のご相談の場合には、次男に自宅の土地・建物を相続させる旨の遺言をすることで、長男に自宅の土地・建物を相続させる旨の遺言を撤回することができます。

前にした遺言の撤回以外にも、前にした遺言からの財産状況に応じた変更や遺言執行者を選任しておきたい、付言事項を追記したい等のご希望がある場合には対応させていただきますので、是非一度弁護士にご相談ください。

以上

 

【コラム】生命保険金の取り扱い

2015-11-26

1 生命保険金

 本人の亡くなった時に支払われる生命保険金は、本人が受け取ることはできません。生命保険金は、保険会社の商品によって、あらかじめ決めていた特定の人物に支払われることになっていたり、相続人に支払われるとなっていたり、特に何も記載がなかったりと様々な内容になっています。

 多額の生命保険が、例えば子のうちの一人に対して支払うことになっていた場合、それは相続財産になるのでしょうか。また、他の子や配偶者は、このような一人だけに支払われる生命保険金に対して、不公平であることを理由として異議を唱えることはできないのでしょうか。

 

2 生命保険金が相続財産となるかどうか

(1)生命保険金を誰が受給するか決まっている場合

  生命保険金を受給する人物が、保険の契約上あらかじめ決まっている場合は、生命保険金を受け取る権利は、受取人として指定されている者の固有の権利となると考えられています。したがって、相続財産には含まれません。その結果、遺産分割の対象にはなりませんし、遺留分算定の基礎財産にも含まれません。また、受取人が相続人かどうか関係なく受給することができることになります。

(2)生命保険人の受取人を指定していない場合

ア 受給者を「相続人」としている場合

     受給者について、単に「相続人」となっている場合は、一見、相続財産となりそうです。しかし、裁判所は、この場合でも「相続人」にあたる者を保険の受取人と指定しており、「相続人」が固有の権利を取得するとして、相続財産にはならないとしています。

              受取人である相続人の間でどのように生命保険金を分配するかは、保険契約の内容として決まっていればそれによります。決まっていなければ、判例上、民法の法定相続分の割合によることとなっています。

イ 特に何も指定されていない場合

    特に何も指定がない場合、今度こそ相続財産となるのでしょうか。しかしながら、ここでも判例は、保険約款に、被保険者の相続人に支払うという旨が記載されている場合は、やはり相続人が固有の権利を取得するとして、相続財産に含まれないとしています。

   約款にも何も記載がない場合に初めて、相続財産となることとなります。

 

3 他の相続人からの異議

 このように、相続財産にならないとすると、特定の相続人だけに生命保険金が支払われることで、著しい不公平が生ずるおそれがあります。

 このような場合には、保険金を受け取った相続人を「特別受益者」として扱うことがあります。ただし、かなり限定的であり、判例では、不公平が著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合に限って特別受益者として扱う余地を認めています。例えば、生命保険金の額が相続財産総額とほぼ同額とかなり高額である上に、受取人が特に負担を負うこともない場合は、著しい不公平といえるでしょう。

 

4 生命保険金への課税

 相続財産とならない生命保険金についても、相続税法上は「みなし相続財産」として取り扱われ,相続税の課税対象となります(なお、被保険者である被相続人が保険料を負担していた場合に限ります。保険受取人である相続人が保険料を負担している場合は、その相続人に対する所得税の問題となります。)。ただし、相続人一人について500万円までが非課税枠となります。

具体例として、相続人となる配偶者と子2人いる場合に、「相続人」を受取人とする生命保険金1,800万円が支払われ、これが法定相続分に従って、配偶者に900万円、子にそれぞれ450万円が支払われた場合を考えてみます。この場合、上記数式に当てはめると、配偶者は250万円、子はそれぞれ75万円が課税対象となります。

 

【コラム】預貯金の相続

2015-10-28

1、預貯金のご相続

 遺産分割と聞くと、相続人の間で財産の分け方を話し合って、最後に合意書(遺産分割協議書と言います。)を作成することをイメージされる方も多いかと思います。遺産分割とは、亡くなった方(被相続人と言います。)の財産を相続人の間で分割する手続きを言い、相続人の間での話し合いで作成することも出来ますし、それではまとまらない場合には、調停や審判という裁判所を利用した手続きを利用することもできます。

相続の対象となる財産には、土地・建物等の不動産、銀行等の預貯金、宝石や着物等の動産等があります。その中でも、預貯金は、他の財産と異なる特殊な取扱いがされています。

今回は、遺産分割での預貯金の取扱いについてご紹介します。

 

2、預貯金の取扱い

(1)最高裁判所の考え方

 最高裁判所は、預貯金は、相続人間で話合いを行わなくても被相続人が亡くなった場合には当然に分割され、法律で定まった相続分に応じて相続人となる者それぞれに帰属し、それぞれが銀行に対して払戻しを求めることができるという判断を示しています。

 つまり、被相続人Aに子B・Cがいる場合、Aが亡くなると、B・Cが相続人となり、それぞれAの財産について2分の1ずつ相続分を有することになります。Aの自宅の土地・建物については、B・C間でその分割の割合について話し合うことになります。他方で、A名義の預貯金については、B・Cは、銀行に対して、ただちにそれぞれ預貯金の2分の1ずつ払戻しを求めることができることになります。

(2)実務上の取扱い

 以上で説明した最高裁判所の考え方に反するようですが、実際のところ、銀行等の金融機関は、後日になって相続人間のトラブルに巻き込まれるリスクを恐れて、相続人全員の署名押印のある遺産分割協議書等がなければ、預貯金の払戻しに応じません。

 銀行等が預貯金の払戻しに応じない場合には、相続人は、預貯金の支払いを求めるために、銀行に対して払戻しを求める訴訟を提起することが必要です。

 また、最高裁判所の考え方からすると、預貯金は、遺産分割手続きを経ずに各相続人に相続されることになりますので、遺産分割調停・審判においてもその対象にならないはずです。

 しかし、実際のところ、裁判所での遺産分割に関する話合いである遺産分割調停では、預貯金を遺産分割の対象としないという相続人からの申し出がない限り、そのまま分割対象として手続きを進められています。また、遺産分割に関する審判官の判断である遺産分割審判においても、相続人間において、預貯金を分割対象にする旨の合意があれば、その合意に従って審理・審判がなされます。

 

3、最後に

 これまでご説明してきましたとおり、預貯金の遺産分割における取扱いは少し特殊です。この特殊性に応じて、円滑で速やかなご相続を進める上で適切な手続きを選択するためには、遺産分割全体を見通した専門的な判断が必要となります。

 もし、預貯金に限らず、ご相続に関するお困りごとがありましたら、是非一度弁護士にご相談ください。ご相談いただいた方が、速やかにご相続手続きを進められるよう、弁護士が全力でサポートいたします。

以上

 

【コラム】死亡退職金の相続

2015-10-19

1 退職金とは

  退職金は、在職中の功績をたたえて退職時に勤めていた本人が受け取るのが通常です。

しかし、会社在職中に本人が亡くなってしまった場合には、本人は退職金を受け取ることができません。定年間近で本人がお亡くなりになってしまった場合と、定年直後にお亡くなりになってしまった場合で取り扱いが異なってしまうのでしょうか。

 

2 死亡退職金とは

実は、本人が会社在職中に亡くなってしまった場合でも、ご家族に退職金が遺族に支給される場合があります。これが、死亡退職金です。

また、家族や兄弟で経営している会社であれば、定年のない役員が亡くなるまで在籍し、退職金が死亡退職金となるような場合もあります。

では、どういった場合に死亡退職金が支給されるのでしょうか。

死亡退職金が遺族に対して支給されるには、まず、故人が退職金を受け取れる地位になければなりません。会社の就業規則(会社で働く際のルールを定めたもの)には、一般的に、「勤続◯◯年以上の労働者が退職又は解雇された時は、退職金を支給する」などと書いてあります。さらに、一般的な就業規則には、「退職金は、支給事由が生じた日から、○○ヶ月以内に、退職した者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う」などと記載されています。この、「死亡による退職の場合はその遺族」という記載が、死亡退職金が遺族に支給される根拠となります。

 

3 死亡退職金が相続財産となるかどうか

(1)死亡退職金を誰が受給するか決まっている場合

   就業規則などで、あらかじめ死亡退職金を誰が受給するかが決まっている場合を考えてみます。この死亡退職金は、相続財産には含まれません。あくまで指定された受取人個人の財産となるのです。したがって、決まっている受給者が原則的には全てもらうことができますし、相続放棄をしても受給できます。国家公務員の死亡退職金も、相続財産になりません。地方公務員も多くは同じ扱いです。

そうすると、相続で問題は生じないようにも思えますが、実はここに落とし穴があります。

お亡くなりになった方の相続人が複数いて、そのうちの1人に対して、1億円の死亡退職金が支払われた場合を考えてみましょう。この場合、お亡くなりになった方の自宅、預貯金などの相続財産が全体で5000万円だったとすると、5000万円の相続財産を相続人で分割すると、1億円の死亡退職金を受け取った人のみが実際には多くの財産を得てしまうこととなります。これは不公平だということで、法律では、1億円の死亡退職金を受け取った人には特別受益があるとして、5000万円の相続財産を分割する際、取り分を調整するということが行われます。

(2)死亡退職金を誰が受給するか決まっていない場合

   この場合は、退職金には、給与の後払的性格があるとして、未払賃金と同様に考え、相続財産となると考えられています。

ただし、(1)のような形で就業規則を作成している会社が一般的です。勤め先の就業規則を確認しておくことが、必要になります。

 

 

4 死亡退職金への課税

  相続財産とならない死亡退職金でも、相続税の対象となる場合がありますので注意が必要です。

  法律上、退職手当金等を遺族が受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の対象となります。受け取る人が相続人であれば相続財産として、相続人でない場合は遺贈によって取得したものとみなされる扱いとなっています。

【コラム】自分が亡くなった後のペットが心配

2015-09-28

近年の日本においては、ペットを家族の一員として捉える人も増えてきました。しかし、自分が亡くなった後、可愛がっていたペットはどうなるのでしょうか。飼い主がいなくなった場合、保健所に連れて行かれて殺処分されてしまうかもしれません。それを避けるためには、ペットをどうしてほしいかについて、遺言を作成することが有用です。

遺言というと、典型的には、法定相続分とは異なる相続方法を定めるケースが想定されます。数人いる子のうち、疎遠だった者には少なく、一緒に住んでいた者には多く財産を分けたい場合。自宅マンションを一緒に暮らしてきた内縁の妻に渡したい場合。たとえば、このような希望を叶えるために、遺言は有効です。

しかし、遺言の内容はこれらに限りません。自分が亡くなった後、自分の所有した財産をどうするかについても指定ができます。

法律上、ペットは飼い主の財産となります。そこで、ペットを飼っていた場合には、自分が亡くなった後ペットをどうするのかについて、遺言で指定することが可能です。たとえば、「ペットの里親を探すボランティア団体等に引き渡す」と、ペットの行く末を遺言に定めることもできるのです。ただ、注意をしなければいけないのは、遺言で財産を受ける人は、特定の財産の遺贈を拒否することができるという点です。せっかく遺言を残しても、遺贈を受ける人がペットの受入れを拒否しては意味がありません。予め、ペットを迎え入れてくれる人の了解を得ておく必要があります。

ペットを受け入れてもらうために、負担付遺贈をすることも有益です。負担付遺贈というのは、財産をおくる代わりに何らかの負担をしてもらうという方法です。ペットを受け入れてもらう代わりに何らかの財産を残すことにすれば、受入れ側も約束違反に問われないよう、しっかりと面倒を見てくれるはずです。

遺言を作成する際には、併せて、遺言執行者を指定することができます。遺言執行者とは、遺言を作成した人が亡くなった後、その遺言の内容を執行する役割の人です。上記のように、ペットをボランティア団体等に引き渡す旨が遺言に定められていた場合、遺言執行者はその内容を実現するよう務めてくれます。

遺言執行者は、遺言で指定しなくとも、相続開始後に家庭裁判所で選任してもらうことも可能です。しかし、生前の事情を知っている人を遺言執行者に指定しておくことで、よりスムーズに故人の意思を実現することが可能になります。

一般に、遺言の執行は、諸々の書類を揃えたり、財産を受け取る側と交渉したり等、煩雑な手続きと手間がかかります。遺言執行者は未成年及び破産者以外であれば就任することができますが(民法1009条)、その負担の大きさを考えれば、弁護士などの専門家を予め遺言執行者と指定しておくことで適切な遺言の執行が期待できます。

 

【コラム】相続法に改正の動き(後半)

2015-09-14

1 相続法制検討ワーキングチームの報告書

今年(平成27年)の2月に法務省が設置した相続法制検討ワーキングチームの報告書が公表されました。前回に引き続き、その内容をご紹介します。

 

2 報告書で検討されたテーマ

(1)寄与分制度の見直し

親の財産の維持又は増加について、特別に貢献した場合は、寄与分として相続分の上乗せを求めることができます。

高齢の親への典型的な貢献は介護です。高齢者の介護は、長期間身体的・精神的に大きな負担がかかるものです。また、子が親の介護のために、子ども自身が多額の金銭を支出しているような場合もあります。

しかしながら、介護は、常に親の財産の維持又は増加をもたらすわけではありません。それゆえ、いくら過酷な「介護」をしても、それが「寄与」であるとは認められない場合があるというのが現在の寄与分制度の問題点です。現在の実務の運用では、介護による寄与を認めないというケースは想定しにくいですが、寄与分の制度上はそういったケースもありえます。

この問題点に対して、寄与の形として、財産の維持又は増加だけでなく、介護をしたことを法律に追加するという案が検討されています。現在の寄与分のあいまいな点を、はっきりした形に修正することとなります。

 

(2)遺留分制度の見直し

遺留分制度についての基本的な内容は、弊事務所ホームページの「遺留分と遺留分減殺請求(http://souzoku.legalcommons.jp/iryubun/)」をご参照下さい。

ア 遺留分制度の問題点

この遺留分制度について、現在3つの問題点があると指摘されました。

(ア) 遺留分減殺請求では、寄与分が考慮できないこと

遺産分割にあたっては、相続人の寄与分についても協議した上で、遺産分割の額を決めますが、遺留分減殺請求事件では、寄与分は考慮できないと考えられています。したがって、例えば、夫が死亡して妻と子が相続人となり、遺言で、子に全ての財産を相続させるということになっていた場合、妻は子に対して遺留分減殺請求をすることができます。しかし、遺留分として認められるのは、法定相続分のさらに半分までです。遺産のほとんどが実質的には夫婦の共有の財産であった場合のように、妻が夫の財産形成に多大な貢献をしていたとしてもその寄与は全く考慮されないのが現行の制度です。

(イ) 相続による法律関係を柔軟かつ一度で解決できないこと

現在の法制度では、遺留分減殺請求権が行使されると、相続人は、相続財産を全員で共有することになります。例えば、土地について遺留分減殺請求がされると、その土地は相続人間で共有することになります。そうすると、その分割をするために、あらためて共有物の分割手続を行わなくてはなりません。

また、遺産分割事件は家庭裁判所の手続となるのに対し、遺留分減殺請求事件は、地方裁判所の訴訟手続となるということも、柔軟かつ一回での解決を妨げていると指摘されました。

(ウ) 事業承継の障害となっていること

親が、子のうちの一人に家業を継がせるため、株式や店舗などを相続させる旨の遺言をしたとしても、他の相続人は、遺留分減殺請求権を行使することで、これを邪魔することができます。このことが、円滑な事業承継の妨げになっているのではないかとの指摘がされました。

イ これらの問題への対応策

(ア) 遺留分減殺請求では、寄与分が考慮できないことについて

配偶者の遺留分を、現在の4分の1から、2分の1まで引き上げるという案や、遺留分の算定の基となる財産について、夫婦共有財産と被相続人固有の財産に分けて考えるべきであるという案、子が遺留分を取得できるのは、親が子を扶養するために本来出すべき額に足りていない場合にのみ、その不足分のみ認めるという案が検討されました。

現在のところ、基本的には、配偶者の遺留分を拡大し、子の遺留分を縮小する方向で検討されています。

(イ) 相続による法律関係を柔軟かつ一回的に解決できないことについて

これについては、遺留分減殺請求の行使によって自動的に共有となるのではなく、その後、その分け方を協議の上合意してはじめて減殺請求の効力が生じるとする案、兄弟姉妹以外の相続人の寄与分がある場合は、これも考慮することで一回での解決を図るという案、遺留分減殺請求事件については、遺産分割協議事件とあわせて家庭裁判所でできるようにするという案が提案されました。

今後、遺留分制度と遺産分割制度、寄与分制度などを総合的に1回で解決するための制度づくりが検討されるものと考えられます。

(ウ) 事業承継の障害となっていることについて

(ア)でも触れましたが、財産の性質によって遺留分の範囲を変えるという案で対応できるのではないかと議論されています。

相続財産・遺留分については、今後は、その実質を踏まえて法制度上も細分化されていく可能性があります。

【コラム】内縁と相続

2015-08-18

1内縁関係と相続

「私には、長年同棲している内縁の妻がいます。私が彼女とこれまで結婚しなかったのは、彼女が、姓が変わるのは嫌だと言うからです。私も彼女の意思を尊重していましたが、私もそろそろいい年になってきましたので、将来できる限り多くの財産を彼女に残してやりたいと思っています。私の父母は既に他界していますが、長年連絡をとっていない兄弟がいます。内縁の妻に財産を残してやるには結婚しなければいけないのでしょうか。」

近年、法律婚以外の家族形態をとるカップルが増えてきていますので、遺言・相続の相談として、このような内縁関係の遺産承継に関するご相談をいただくことが増えてきています。

 

2内縁関係の遺産承継のポイント

(1)内縁関係にある者は相続人ではない

 まず、現在の民法では法律婚をしていない者は、配偶者として相続人になることができません。今回のご相談の場合ですと、ご相談者様がお亡くなりになった際には、ご相談者様のご兄弟が遺産の相続人となってしまい、ご相談者様の内縁の奥様は遺産を受け取ることができません。

(2)遺言の作成と留意点

 しかし、ご相談者様の内縁の奥様に遺贈する旨の遺言を作成すれば、遺産を残すことができます。。

この際注意しなければならないのは、遺留分です。遺留分とは、相続人に保証されている最低限の相続分で、これを侵害する場合には相続人によって一定の範囲で遺贈の効果を否定するおそれがあります。

もっとも、この遺留分を持つのは兄弟姉妹以外の相続人、すなわち配偶者、子、直系尊属(親など)です。したがって、今回のご相談者様の場合はご兄弟しかいらっしゃらないということですので、今回のケースでは問題となることはありません。

(3)内縁の方が相続財産を取得できる例外的な場合

 被相続人の内縁の方については、被相続人について全く相続人がいない場合に限り、特別縁故者として家庭裁判所の裁量によって被相続人の遺産を与えられる可能性があります。

 また、被相続人と内縁の方が被相続人名義で家主と契約していた借家にお住まいの場合、内縁の方は被相続人から賃借人としての地位を承継することができます(借地借家法36条1項)。

 

3最後に

 以上ご説明してきましたとおり、事前の手当てをしておかなければ原則として内縁関係にある方に遺産を承継することはできません。内縁関係にある方への遺産の承継にお悩みがある場合には、是非弁護士にご相談下さい。

弁護士は、遺言・相続の専門家ですので、ご要望を可能な限り実現する遺言を作成いたします。

以上

 

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