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【コラム】相続により負う債務への対応

2016-12-26

 1 「借金」も相続されます。

よくテレビドラマでは「お父様が亡くなったのは悲しいけれども、その遺産は5億円。母も既に亡くなっているし、私は1人っ子だからこの財産は全て私のもの。」などの光景が流れます。では遺産がなくて、逆に3億円の「借金」があるとすると、どうなるのでしょうか。相続により「借金」はなくなるのでしょうか。

じつは、「借金」(金銭債務)は、相続放棄や限定承認などをしない限り、相続することになります。つまり、なんの手当てもしないと、相続人は「借金」を相続することになってしまいます。

 

2 原則:各相続人の債務額は相続分に従って負います

相続人は、相続分(法定相続分又は遺言などで指定された相続分)に応じて「借金」(金銭債務)を負うことになります。言い換えると、お金を貸している人は、相続人に対して、当然に「貸したお金を支払え」と請求することができることになります。

なお、保証債務など契約の内容によって、相続人には債務を負わせないとする契約ものもありますので、すぐに応じるのではなく、まずはよく契約書を確認することが重要です。

 

3 ~事例を通して~

【事案1】Aさんには、妻と子(40歳)がいます。Aさんは友人Bから1000万円の借金をしていたとします。Aさんが亡くなった場合、相続人は妻と子の2人です。遺言もないことから、相続分は民法に従い、それぞれ2分の1ずつとなります(民法900条1号)。

【結論】この場合、お金を貸している友人Bは、相続人である妻と子に対して、それぞれ500万円ずつ支払うように請求することができます。

 

では次の場合はどうでしょうか。

【事案2】事案1と同様に、Aさんには、妻と子(40歳)がいます。Aさんは友人Bから1000万円の借金をしていたとします。Aさんは生前、「妻の相続分は4分の3、子の相続分は4分の1とする」という遺言を残していました。債権者Bは、その遺言の存在を知るはずもなく、子に対して、例1と同様に500万円を請求しています。子はこれに応じて払わなければならないのでしょうか。

【結論】現在の最高裁が定めたルールとしては、債権者Bが、法定相続分に従った請求した場合、「借金」を相続した相続人はその請求に応じなければなりません(最判平成21年3月24日)。差額である250万円については、相続人がいったん支払って、あとから他の相続人に自ら取り立てることになります。つまり、請求された人は、回収のリスクを一時的に負わされていることになります。

では仮に、債権者Bが遺言の存在を知っていた場合はどうでしょうか。この場合は、最高裁のルールでは、債権者Bが子の相続分が4分の1であることを承認した場合には、債権者Bは子に250万円をだけ請求することはできます。

 ですので、債権者からは法定相続分を基準として請求がされることになります。 

 

4 相続による債務を負うことの対応方法

相続をきっかけに、突然に「借金」を負う場合の対応方法としては、①相続放棄する、②限定承認をする、という2つの手段が考えられます。

相続放棄とは、はじめから相続人ではなかったことにする制度です(民法939条)。したがって、「借金」を負うこともなく、請求されても一切払う必要はありません。しかし、相続放棄は、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりませんのでご注意ください。

 また、限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナス財産も負担するものです。これには相続人に全員の同意が必要となり、1人でも反対すれば使えません。

 

 以上のとおり、相続によってある日突然、債務超過に陥ることもあり得えます。相続が発生した場合には、財産の調査を含めすぐにご相談ください。

【コラム】遺言について~現行法と法改正の動き~

2016-11-30

1 「遺言」の法律の要件

 遺産をめぐる争いが発生したときの確認事項として、遺言の有無があります。

一般に「遺言が存在する場合にはその遺言に沿って処理される」と考えられがちです。 しかしながら、遺言があればそれに沿って処理がされるというわけではありません。

というのも、「遺言」の効力は民法に定める条件を充たすことで初めてその効力を有するからです。仮に、遺言がその条件を充たさない場合には、原則としてその遺言は効力が発生せず(民法960条)、遺言作成者の意思に沿った処理の実現ができなくなってしまいます。

そこで、今回は、遺言のなかで、最も作成されることが多い「自筆証書遺言」の作成についてみていきます。 最後に、法改正の動きもありますので、その動向も確認していきましょう。

 

2 ご自身で作成する遺言(自筆証書遺言)

(1)作成者が遺言を作成する場合には、遺言者が①全文、日付、氏名を自書して、②印を押さなければならないとされています(民法968条1項)。

(2)パソコンによる作成はどうでしょうか。 せっかくだから体裁を整えた遺言を作成したいと思いパソコンで作成されるケースがあります。しかしながら、ワープロやパソコンで作成した場合には「自書」とは認められません。これは、自書、すなわち自分の手で書いて作成することで偽造を防ぎ、遺言者の意思を反省した遺言を作ることを重視しているためです。ですので、民法が定める条件を欠き、効力が発生しません。  

また別のケースとしては、遺言をパソコンで作成しデータを残していたけれども、印刷をしないまま亡くなり、その後にデータは発見された、というものがあります。この場合も、たとえ本人が当該ファイルを作成していたとしても、「自書」されていないため、法律上の条件を欠いているため、法律上の効力が発生しません。

(3)家族が手を添えて作成したものはどうでしょう? まず確認しておくべきことは、作成者が口頭で伝えて、他の者が聞き取って作成したものは「自書」とは認められません。

では、その上で、作成者以外の者が手を添えながら書いたものはどうでしょうか。最高裁判所は、①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、②遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、③添え手をした他人の意思が介入した形跡のない場合には、自筆であるとしています(昭和62年10月8日)。

このように、裁判所は、遺言の作成にあたり、遺言者の意思がそのまま反映され、第三者の意思が入らないよう厳しく条件を定めています。

(4)作成日付がないものはどうでしょうか。ここでいう作成日付とは、年月日の全てを要します。

例えば「平成11年11月吉日」というように日付が特定できないため、条件をみたさずに無効となってしまいます。

 

3 法改正の動き

 ここまで見てきたように、ご自身で作成される自筆証書遺言の「自書」については厳しい条件が定められています。 なお、現在、法務省で自筆証書遺言の方式緩和が検討されています(平成28年6月21日現在)。具体的には、対象財産の特定(不動産の所在、地番、家屋番号など)については、自書でないなくてもよいものとするが、その事項が記載された全てのページに署名押印する(http://www.moj.go.jp/content/001201997.pdf)。

この改正案は、財産特定のための記載事項についてのもののみであり、それ以外については検討されていません。 したがって、自書で遺言を作成する場合には、作成者が全てを手書きし、日付、署名、押印をして初めてその効力が発生します。作成前に、今一度、その条件をご確認ください。 

【コラム】遺言に必要な「印」って何?

2016-10-18

1 遺言に要求される「印」

遺言には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」があります。遺言が法的に有効であるためには、それぞれの形式に応じて、法律的に正しい作り方をする必要があります。どの遺言にも共通する作り方として、「印」を押す、という要件があります。

今回は、この「印」というものに関する、最高裁判所の判断についての話題です。

 

2 世の中にある、様々な「印」

日本で生活をしていれば、「印」というものには様々な種類がありますね。銀行の口座を作るための銀行印や、重要な契約書等を作る際に使う役所に届けた実印など、使用目的からの分類があります。また、100円ショップで売っているスタンプ印や高級印鑑店で売っている象牙製の印など、物の価値自体から分けられる分類があります。日本では、用途に応じて、様々な「印」を使い分けています。欧米などでは、このような印鑑の文化自体がなく、サインで済ませることが通常です。

 

3 最近日本の最高裁判所で問題となった「印」

それでは、「花押」という「印」はご存知でしょうか。「印」と言いながら、判を押すのではなく、自分の氏名等の字をデザイン化して書くサインのようなもので、古来、日本、中国などで使用されてきました。今回取り上げる判例は、この「花押」が遺言に必要な「印」と認められるのか、というものです。

結論をいうと、最高裁判所は、この「花押」を「印」とは認めませんでした。一審も二審も「花押」について「印」と認め、遺言の法的効力を有効としましたが、最高裁判所はそれを逆転させてしまいました。その理由はこうです。「花押を書くことは,印章(いわゆる「ハンコ」)による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。」「我が国において,印章による押印に変えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。」

まとめると、書類を作る時に「花押」を使うという文化は通常ないから、「印」とは言えない、といったところでしょうか。

 

4 裁判所が悩んできた「印」という言葉の意味

上記の理由について、最高裁判所がこの「印」に関して、これまでどのような判断をしてきたかの経緯を見てみましょう。

(1)日本に帰化したロシア出身者のサイン

最高裁判所は、押印がなくても遺言書は有効である、と判断しました。本人の生活様式が日本式ではなく、日本の押印という慣行に馴染まなかったのに、日本の押印文化を適用させる必要はない、サインがあれば偽造や変造は困難であり、遺言の真正(本人の意思がきちんと反映された文書と言えるか)を担保するために設けられた押印という要件を逸脱する恐れがない、というようなことが、その理由になっています。

(2)指印(指紋)

これについても、最高裁判所は、遺言を有効としました。遺言書に書かれた遺言者の真意の担保という観点からも問題はなく、指印によって文書の作成を完結させるという考えは日本の慣行や法意識から外れるものではない、といったことが理由となっています。

 

さて、このような内容を今回の「花押」に当てはめるとどうでしょうか。確かに、「花押」を普段から使用しているという人は稀だと思われます。そのため「花押」は、確かに現在の日本の慣行に馴染まないと言えるかもしれません。

一方で、遺言書を書いた人の意思が反映されていること(遺言の真正)を担保するという観点からすれば、本人が独創的にデザインした「花押」は、印章のように他人に勝手に持ち出される危険はなく、氏名を書いただけのサインよりも偽造や変造の恐れも少なく、よほど担保性が強いとも言えるでしょう。しかし、担保性だけが遺言に関する民法の趣旨ならば、どのような形式のものだろうと問題ない、という結論になってしまいます。そうすると、「印」という言葉が条文に存在する意味自体が希薄化してしまうのです。このようなことも考え、最高裁判所は「慣行」という観点から「印」という言葉が条文にある意味を考え、「花押」を「印」とは認めなかったのかもしれません。

 

「印」という文字一つでも、様々なことを考える必要があることが、法律の難しいところです。

【コラム】SNSの扱いについて

2015-11-04

1 Facebook追悼アカウント-亡くなった後のことを今から考える

先日、代表的なSNSの一つであるFacebookにおいて、利用者が生前に追悼アカウントを作成することが出来るようになりました。追悼アカウントを作成すると、利用者が亡くなった後も「追悼」との表示の下、Facebookにアカウントが残されることになります。これにより、利用者が亡くなった後も、友達や家族が集い、その人の思い出をシェアする出来るサービスとなります。

このように自分が亡くなった後、残される人々に対して、自分の意志を伝える方法としては、従来から遺言が利用されてきました。

もっとも、遺言というと、ついつい遺産をどのように配分するかを決めるだけでしょ?と思いがちです。しかしながら、遺言に記載できる事項は、遺産の配分だけに限られる訳ではありません。遺産以外にも、例えば、自分の死後の葬儀の方法や献体・臓器提供の希望、ペットの世話を誰に見て欲しいものか等というものまで、さまざまな内容を、「付言事項」として記載することが出来ます。今回は、この付言事項の注意点等についてお話ししたいと思います。

 

2 付言事項って何?

付言事項には、相続人に対する法的な拘束力はありません。しかしながら、遺言者の最後の遺志を示すものであるため、相続人が尊重する可能性は一般に高いといえます。

また、付言事項には、遺産の配分を決めた理由を記載することが出来ますが、これを述べることにより、相続人間の不要な紛争を防止することができる場合もあります。例えば、遺留分を侵害する遺言書を残した場合に、配分について十分な説明がなければ不利に扱われた相続人は不満に思うことがほとんどでしょうが、その理由をきちんと説明すれば納得してくれる可能性もあります。

付言事項を残すことにより、相続人間の不要な紛争を防止することができる一方で、内容によってはかえって不利に扱われる相続人の不満を増す結果に終わることも考えられます。そのため、付言事項を残す際には、遺産の配分と同じように慎重に内容を精査する必要があります。

また、付言事項を記載した遺言書を作成していたとしても、自筆証書遺言(遺言内容、作成日付、氏名を遺言者が自筆し、押印した通常の遺言書のことです。)だと、相続人が発見できないこと等の理由により、結局実現できないケースも考えられます。そこで、遺言を公正証書で作成し(公正証書遺言といいます。)、さらに遺言施行者を指定しておくことで、速やかに付言事項を含め遺言書の内容を実現することができるようにしておくなどの工夫が必要です。

ここまで説明してきましたとおり、付言事項には法的拘束力はありませんが、最後の遺志を示すものとして重要です。そして、その書き方には十分な配慮が必要となります。

現在、遺言の作成をお考えの方は、弁護士が内容を確認させていただき、アドバイスすることもできますので、財産の分与以外に残されることになる方々へ言い残しておきたい事項がある場合には、是非一度弁護士にご相談下さい。

以上

 

【コラム】お一人様相続について

2015-04-27

1「おひとり様」相続問題

「現在、私は一人暮らしをしていて、面倒を見てくれる親族もいません。私が死んでしまった後、私の財産はどうなってしまうのでしょうか。」

このようないわゆる「おひとり様」相続問題に関して、ご相談をいただくことがあります。

 

2「おひとり様」相続問題の解決方法

(1)推定相続人の調査

 このようなご相談をいただいた場合、まず、相続人となることができる者(「推定相続人」と言います。)がいないかどうかを確認することになります。

相談者のお話によれば、「面倒を見てくれる親族がいない」とのご認識ですが、以前結婚して配偶者との間に子供がいたが、離婚時に親権を相手が引き取ってそれ以来会っていないだとか、子供の生活ぶりに呆れてしまって絶縁してしまった、兄弟とは不仲で全く没交渉である等ということも考えられます。

このような場合、法律上、相談者の子や兄弟(あるいはその代襲者)が推定相続人となります。

調査によって推定相続人の存在が発覚した場合には、生前にその推定相続人に財産を相続させるかどうか決めておくことが後々のトラブルの発生の防止になり、危急の事態となったときの無用の不安を取り除くことができます。そのために自分の財産を誰に相続させるかについて記載した遺言を作成しておくことが有用です。弁護士は、推定相続人への相続手続きがスムーズに進められるように資産負債の調査や遺言の作成をお手伝いすることができますので、是非ご相談ください。

(2)推定相続人がいない場合

 推定相続人となる者がおらず、そのまま被相続人が亡くなってしまった場合には、以下のような手続を経て被相続人の財産が処理されることになります。

まず、利害関係人や検察官の請求により、家庭裁判所によって相続財産管理人が選任され、相続財産管理人が選任されたことを公告します。

次に、上記公告から2か月が経過しても名乗り出る相続人がいなければ、被相続人の債権者(例えば、被相続人が居住していた物件の大家等)や受遺者に名乗り出るようにさらに2か月以上の期間を定めて公告します。名乗り出た債権者等がいた場合には、相続財産管理人が公告期間満了後に相続財産から債務を支払い清算します。仮にここまでの手続きの中で相続人が全く名乗り出なかった場合、相続財産管理人は、更に6か月以上の期間を定めて相続人捜索の公告を行います。この期間中に相続人が名乗り出ない場合に相続人の不存在が確定します。そして、被相続人と生計を同じくしていた者や被相続人の療養看護に努めていた者等(特別縁故者といいます)は、家庭裁判所に対し、清算後の被相続人の財産について財産分与を求めることができます。

最後に、特別縁故者がいない場合や特別縁故者に分与された後に残った財産は、最終的に国庫に帰属することになります。

以上のように、相続人がいない場合には、少々面倒な手続きを経て被相続人の財産は国庫に帰属することになります。

最終的に国庫に帰属することになるのであれば、これまでお世話になった人に対して贈与したい、あるいは、福祉団体等へ寄付したい等といったご希望があるかもしれません。そのような場合に、弁護士は、ご希望をかなえるために必要な遺言作成等のお手伝いをすることができますので、是非ご相談ください。

 

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